ストロベリースカッシュ《三ツ谷隆》

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『ハァハァ…』



三ツ谷の家からノンストップで走り続けた。
息切れして汗もかいて必死の形相で走るワンピースでスニーカーの私を、過ぎ行く人達は変な目で見ている。
それでも止まれないのは、グチャグチャな感情をどうにかしたいから。



「A！」



名前を呼ばれて振り返れば、三ツ谷が追いかけてきていて。



『何で来んのよ、バカぁ！』



いつもなら三ツ谷なんて簡単に撒けるのに、ヒラヒラのワンピースが足に纏わりフルスピードが出せなかった。



「待てって！」



パシッと取られてしまった右手首。
こんな時なのに三ツ谷に触れられた場所が熱くなる。



「ハァハァ……逃げんなって……ハァハァ…」



必死で追いかけてきたのか、私以上に息切れしていて汗が流れる三ツ谷にはいつもの余裕が見られなかった。
ハァハァ、と膝に手を付き息を整えながらも右手首はギュッと掴まれたままで。



「自惚れて良いか……？」



下を向きながらもはっきりとそう言った三ツ谷。



「Aの……Aの好きな奴、オレだって自惚れて良いんだよな？」



今度は立ち上がって私の目を見ながらそう言うのだ。
だから、私も分かりにくいサインじゃなくてはっきりと。



『自惚れて良いよ』



お互い額に溜まった汗が流れてきて泣いてるみたいになったけど、やっと掴んだ手を離さないみたいに絡め直して笑いあった。








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