おとぎの国に堕とされて【短編集】

迷子の野良猫＊孤爪研磨【白南風戀訶様リク】 ページ8

部活の無いある日、俺は一人で帰っていた
クロは委員会らしい

…そんな事より困った

「ここ…どこ」

見覚えのない住宅街

新しいゲームのラスボスに手こずって
夢中になっていて
視線をあげたら既にこうなっていた

「あ、スマホで地図…え？」

電池切れ

そうだ、今日充電器忘れたんだった
これじゃ、連絡も出来ない

仕方無しに
適当に歩いてみる


「！…猫」

クロそっくりのブサイクな猫

こちらに気付いてニヤッと笑って
走り出す


「行くぞ、研磨」


まるでクロにそう言われた気がして
咄嗟に追い掛ける




「ﾊｧﾊｧ…黒尾猫(アイツ)…速すぎ…ﾊｧ…ｯ…」

見失ったし、さらに此処が何処か分からない

今日の俺は
可笑しい


「ニャー」

「？！黒尾猫(クロネコ)？」



あっちから鳴き声がした

角を曲がる




『おまえ、ホントにブサイクだねー
でも何か可愛いんだよな ブサかわってやつかなー
ねぇ、ふふ かわいい

おまえ、野良なの？ご飯食べれてる？
あ、元気だから大丈夫か』


黒尾猫(クロネコ)は
撫でられて気持ち良さそうに
喉をゴロゴロ鳴らしていた


黒尾猫(クロネコ)を撫でてる子が

ふと顔を上げる


瞬間目が合う


きゅううううん


堕ちた


『あれ？人がいる…
てことは、嘘！？今の見てた！？』

「う、うん…」

『うわー恥ずかしい
他の人には内緒！ね？』

照れくさそうに笑う彼女は
誰だろう

『え…？ 君の、それ…
なに……？』


ハッとして彼女の指差した
自分の足元を見る

「な、に…これ…？」


ハートが

落ちていた


「え…？ちょっ、なに？」


『君！顔真っ赤だし大丈夫？！』

彼女が近付いてくる

比例するように増えるハート


あ、俺からこぼれてるんだ

じゃあこれは、俺の？


『本当に大丈夫？』


分かった

「う、ん…大丈夫」


これは俺の気持ち


野良猫に話しかけてた
名前も知らない彼女に

一目惚れしてあふれた

具現化した感情たち

訳わかんないけど嫌いじゃない

「あ、の…」

『ん？なに？』

「…えと、名前」

『名前？…あぁ、Aです
君は？』

「…研磨、です」

『研磨…
よし、覚えた！よろしくね、研磨！』

「うん、よろしく …A」

「ニャーオ」

『あら、おまえまだ居たのか』

「黒尾猫(クロネコ)…ありがと」ﾎﾞｿ

＊ 迷子の野良猫＊


『え？なんて？』

「ううん、何でもない」



ニヤニヤ笑いのブサイクな猫のお陰

帰ったら少しクロに優しくしよう、うん

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