13 ページ32
.
渋やんさんの店を出ると、外はすっかり暗くなっていた。
本当はまだ釈然としない気持ちが残っているのに、ご機嫌な章大君は私の手を引いて鼻歌交じりで先に進む。
「うまくごまかされた気がする」
一人でモヤモヤして悩んだ時間がばかみたい。
「まぁだ言ってる。僕の気持ちってそんなにも伝わってへんの？こんなに好きって言ってんのに」
「それと私が不安になる気持ちは多分別なの。
付き合ってる人が私を友達に紹介したくない理由ってなにかな、と思ったら、普通は悪い想像するじゃん。
しかも前の彼女はだいたいみんな行ってるけど自分だけは違うとか言われたら、もやもやするよ」
そう言ったら、章大君はちょっと足を止めてキョトンとした。
「そうなん？そんなん言うたら、僕自分から女の子に声掛けたのAちゃんがはじめてやで。
こんなに執着すんのもはじめてやし。
やから違うの。―――Aちゃんは僕のはじめての女の子やから」
章大君は歌でも歌うようにそう言ってまたちょっと笑った。
私ばっかり怒ったり泣いたりして、本当にバカみたい。
久しぶりに感情の赴くままに泣いたし、章大君もどうやら私に愛想をつかしていないらしいことがわかったところで、私は雨上がりみたいにスッキリした気持ちで章大君に向き直った。
「私も、人前でこんなに泣いたのは大人になってから初めてかも。
自分から告白したの章大君が初めてだし」
こんなに感情を揺さぶられたのは初めてで
こんなに、認められたいと思ったのも初めてかもしれない。
章大君はすごい。
「初めてだから、やさしくしてね？」
とりあえずもう章大君の前で泣くのは嫌だ。
めんどくさい女だから、覚悟してね。
「…はんそく」
かわいすぎるやろ、とつぶやきながら前を向いて歩き出した章大君の手を気持ちを込めてぎゅっと握ったら、章大君はちゃんと握り返してくれた。
てのひらから伝わる熱が、またひとつ私を幸せにする。
Fin
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 266人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めろんぱん(プロフ) - きりん虫さん» ほっておかないで！お泊まりぃ！！ でも別の沼も気になる。。 (2021年9月17日 22時) (
レス) id: b5cc118e0b (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - めろんぱんさん» 別の沼に夢中になっているうちにこっちの章大君のことを放置しておりました…。反省。 (2021年9月17日 21時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - 二宮くぅん！！！！！！！ はぁはぁ。（おかわり） (2021年9月17日 13時) (レス) id: b5cc118e0b (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - きりん虫さん» ナイス二宮投入。うちのにも出すかな。お泊まりお泊まり！！！！ (2021年8月9日 19時) (レス) id: b5cc118e0b (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - まろりー。さん» ありがとうございます！かわいい仲良しになっていますでしょうか先生… (2021年8月9日 19時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きりん虫
| 作成日時：2021年4月23日 12時
