コップの中のあらし（青）2

番外編：おせっかいたちの午後（橙緑） ページ14

◎丸山side







「うわぁぁ、やってもうたどうしよう！！」


昼下がりの大学の構内。

眠気に誘われながらいつもの3人で講義室に向かってたら、Aちゃんとのお昼のデートからニコニコで戻ってきたはずの章ちゃんが隣で急に声を上げたから思わず立ち止まってしまった。


「どうしたん」


章ちゃんはワタワタしながら、おなかに抱えたデイバックのテキストやらプリントやらの隙間から、慎重に一冊のファイルを取り出す。


「間違ってAちゃんの持ってきちゃったぁ」


泣きそうな顔でそう言うて、いそいそとスマホを操作。
章ちゃんが急いでかけた電話の先から、Aちゃんの困った声が聞こえる。


「ほんまにごめん！！今すぐ持っていくからっ！！」





俺も人のことは言えんけど、章ちゃんのデイバックの中はいつもぐっちゃぐちゃ。
ドラえもんの４次元ポケットみたいなカオスやから、宇宙の塵と化す前に今見つかってよかったかもしれん、けど

もうすぐ午後の講義が始まる。
章ちゃんは次の講義当てられる予定やから居らんかったら絶対ばれる。

とっさに今にも飛んでいきそうな章ちゃんの手を引っ張って止めた。


「待ち。もう時間ないで」


俺が代わりにAちゃんのところに行ければええけど、俺もTAを頼まれてるから講義には出なあかんし。


「ふぁぁ。俺、行こか？どうせ寝ようと思ってたし」


眠そうな顔で後ろからついてきてた大倉が、あくびを噛み殺しながらファイルに手を伸ばす。
章ちゃんはその手をちょっと避けた。


「…なんよ、ヤス」


「余計な事言わん？」


「なに？余計なことって」


「連絡先聞いたりとか、僕の昔の話したりとか」



あーあー、大倉にはそんな言い方したらあかんのに。

しかも章ちゃんはお願いしなきゃいけない今の自分の立場がわかってない。


最近の章ちゃんはずっとこの調子。
Aちゃんのことが絡むとどうしようもなくなる。








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