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◎ 章大side
初めての夜のデートは、楽しめるところを選んでおきたいと思ってた。
Aちゃんにどこか行きたいところがあるか聞いたら、たぶんどこでもいいって言われる気がしたし。
彼女はずっと受け身。
電話もメッセージも、ご飯のメニューでさえも。
ずーっと僕のターン。
これは僕と彼女の熱量の差であって、温度の高い方から低い方に空気が動くのは自然の摂理やから。
僕の熱はずっとずっと高いまんまで、「ガンガン行こうぜ!」のままメーター振り切れてる。
「押しすぎやから引け、駆け引きをせい」とか「女の子には優しく慎重に。当たって砕けたら終わんで。“命大事に”」とか言う大倉とマルの言葉も、聞いたときはそうよな、と思うけどやっぱり自然の摂理には勝てんのよ。
「夜会いたい」って言うたら彼女はOKしてくれて、せっかくやから店まで迎えに行くっていうたら、ちょっとびっくりした顔して、考えた末に「ありがとう」って言うてくれた。
今日は、夜のAちゃんと会える。
ツリーハウスみたいでどっから入るんやろう、と思ってたけど、ちょっと奥まったとこにちゃんとネイルサロンの入口はあった。
「こんばんは」
「いらっしゃいませ」
緊張してドアを開けたら、そこにはどことなくAちゃんに似た雰囲気の年配の女の人がおって、この人がAちゃんの叔母さんかな、と思う。
びしっとした化粧の凛とした人。
「あの僕、安田と言います。今日Aちゃんと約束してて」
「うん。聞いてます。いつもAにご飯を食べさせてくれてありがとう」
夜やし紹介される可能性も考えて一応きれいめな服は着てきたけど、やっぱりちょっと緊張する。
「Aちゃんのランチのカロリーは僕が守りますんで」
「ふふっ。よろしく」
Aはテラスの掃除をしているから、と言われて促されて奥に入る。
店は大きい窓から緑と自然光がたくさん入るつくりの、いい意味で落ち着く空間。
ここが、ツリーハウスの内側か。
その奥の大きいガラス窓の向こうのテラスに、手すりにもたれて道路を眺めているAちゃんが見えた。
裾の長いワンピースが、風に揺れて
初めて見る私服に、きゅんきゅんする。
こっちに背中を向けたまま、ツリーハウスの上から、下界を見下ろして
彼女が、ちょっと笑った。
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みき(プロフ) - 待ってます! (2021年4月14日 10時) (レス) id: c6ee858f5f (このIDを非表示/違反報告)
cayochi(プロフ) - 私も待ちます (2021年4月14日 8時) (レス) id: 89ed3d2d70 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - いい子で待ってます (2021年4月14日 8時) (レス) id: b5cc118e0b (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - イイ二人の世界だ〜(*´艸`*) (2021年4月14日 8時) (レス) id: d5063d2f63 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 二度目の更新有難うございます!丸ちゃん、金木犀の香り…想像できます〜♪♪でも、連絡先交換とか名前で呼ばせるとか!?えっ!!丸ちゃんーー!!!って感じです!!笑 (2021年4月13日 19時) (レス) id: c6ee858f5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きりん虫 | 作成日時:2021年3月8日 9時