検索窓
今日:4 hit、昨日:7 hit、合計:74,433 hit

27 ページ27

.



「そちらもだいぶ若い彼女やけど、、、」


章大君に言われてはっと我にかえる。

確かに。
その人の隣には明らかに若い高校生ぐらいの女の子がいて、そっちだって年下の彼女なのに何がすげーのか。


私の腕をちょっと強いくらいに掴んでいた章大君の手が、腕から手首、手の甲を滑って、指先に絡められてぎゅうっと握られる。


心臓が跳ねた。


意識がてのひらに集中する。
あったかくて、ちょっと湿ったてのひら。


そうだ、章大君がいるんだった。


そう思ったら、吐くのを忘れていた息がゆっくり出ていった。

苦しかったのにもう息ができる。


――ああ、やっぱり章大君はすごいな。すごい。


感動して黙っていたら、その人は急に水を得た魚のように喋りだした。


「こいつさぁ、新卒でうちの会社入ってきたんだけど使えねーのなんのって。いい大学出てるからさぞかしできるんだろうと思ったのに全然役に立たなかったわ!」

「ちょっ、さっきから声デカない?この人…」



章大君は繋いでいないほうの手で片耳を押さえて言った。

さっきから章大君のツッコミが的を得ていておかしい。

そう言う章大君だってさっき大声ではしゃいでいたのに。


ちょっと笑いそうになって横を向くと、こわいくらい真顔の連れの女の子と目が合った。



「最低。あたし、女の人に“こいつ”とか言うオトコむり」



彼女はあきれた様にそう言い放って、出口の方に行ってしまった。


「あの、彼女、行っちゃいましたけど」

「えッ!あッ待って!」




去っていく2人の後姿を見送ってしばらく呆然としたあと

章大君があわてた様に繋いでいた手を離した。


「わぁ!勝手にさわってごめん!Aちゃん大丈夫?」


「私こそごめん」

「何でAちゃんがあやまるの。悪くないやろ?」


「でも、私がえらんだ」


私の選択は、間違っていた。水族館を選んだのは私。


「ちがう。2人でえらんだ」


章大君はまた、笑った。
大人みたいな顔で。

つられて、ちょっとだけ自分の口角が上がったのがわかった。




多分人生の中で、こんなことは何回もあるんだと思う。

何かを選んで、間違える。

厳しい現実にどうしようもなくなって、動けなくなるのだって、本当はふつうのことだ。



そういう、ふつうのことをするときに



章大君が横にいてくれたら、それだけでいいな、と思った。





.

28.→←26



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (163 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
276人がお気に入り
設定タグ:関ジャニ∞ , 安田章大
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

みき(プロフ) - 待ってます! (2021年4月14日 10時) (レス) id: c6ee858f5f (このIDを非表示/違反報告)
cayochi(プロフ) - 私も待ちます (2021年4月14日 8時) (レス) id: 89ed3d2d70 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - いい子で待ってます (2021年4月14日 8時) (レス) id: b5cc118e0b (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - イイ二人の世界だ〜(*´艸`*) (2021年4月14日 8時) (レス) id: d5063d2f63 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 二度目の更新有難うございます!丸ちゃん、金木犀の香り…想像できます〜♪♪でも、連絡先交換とか名前で呼ばせるとか!?えっ!!丸ちゃんーー!!!って感じです!!笑 (2021年4月13日 19時) (レス) id: c6ee858f5f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:きりん虫 | 作成日時:2021年3月8日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。