破れた傘にくちづけ-クジラとペンギン-（緑紫）

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“腹減ったらいつでも来ていい”って言われたし、カレーはうまいし、俺は気が向いたときにカレー屋に通うようになった。


組のもんに“若はカレー中毒や”って言われてんのは知ってる。



カレーは万能食。
肉も野菜も炭水化物も一皿で取れる。
暑い時食べても寒い時食べてもうまいし、なんなら冷めててもうまい。
時間がない時にさっと食べれるのもいい。


実際3日と経たず食いたくなった。


なんかヤバい薬でも入ってんのちゃうかな。

まわりが言うように俺は中毒になってんのかもしれん。



カレー屋は俺が来るのが分かってるみたいにいつも俺の分のカレーを用意していた。

電話すれば黄色いキッチンカーで俺を迎えに来て、いろんなとこでカレーを売る。

緑のエプロンを渡されて店を手伝わされる時もあったし、「今日は疲れてるみたいやから」とか言って店が終わるまで助手席に押し込められて休まされる時もある。

こんなカレー臭くて狭い車の助手席で休めるわけないといつも思うけど、そこで眠るとなんでか絶対体が軽くなって、目覚めるとスッキリ、視界が明るい。


J「タツ」


そして呼ばれてええ匂いがして目を開けると、大盛りのカレー皿を抱えたカレー屋が満足そうに笑う。

八重歯が眩しく光る。




カレー屋と、やくざ

その立ち位置は初めからいっこも変わりない。

それなのに

カレー屋といると、俺は自分がやくざなのをすぐ忘れる。






カレー屋に会う時は、いつも晴れやった。

電話した時は雨やったのに、颯爽と太陽を背負って目の前に現れた日もある。


あいつは多分、晴れ男や。








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