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きょとんとした彼の手からカメラを預かって、メモリーを一枚目の画像にしてまた渡す。
「これを撮った人のカメラ」
かち、かち、かち、かち
意外に子どもみたいな彼の手が、カメラの中の画像をめくる度に乾いた音が部屋に響く。
画面の中は、窓枠越しに見える空の写真。
そのあいだに何気ない日常の一コマ。
上手に焼けたたまごやき。
いつもうちの車のボンネットで昼寝している猫。
車で5分の海。
急にカメラを向けられた写真の中の私は、無邪気に笑っている。
窓枠越しに見える空の構図はいつも同じ。
もともとここから写真を撮るのを毎日の日課にしていたのはあのひとだ。
撮るのは風景ばかりだったのに、気まぐれに時々私にもレンズを向けた。
あのひとが置いていったカメラに残った写真を見ていつも思う。
私は、あのひとの前ではこんな風に笑っていたのか。
これが、あのひとの見ていた世界。
一枚の画像の所で、彼の手が止まる。
「その写真、ちょっとすごいでしょ」
同じ家の窓枠越しに見える空の構図なのに、空の色が全然違う。
暗闇と青空のちょうど間位の色合いの、深い深い青から、グラデーションで色の変わる空。オーロラみたい。
ずっとここに住んでいるのに、こんな空は見たことがなかった。
いつ撮られたものなのか私は知らないので、きっと私が寝ている間の夜明け前だろうと思って
同じ空が運よく私の撮る写真にも写るんじゃないかと思って
カメラの中にその写真を見つけてからずっと、同じ構図で夜明け前の写真を撮り続けている。
ずっと一緒にいて、同じものを見ているんだと思っていたのに。
私とこのカメラを置き去りにしてこの部屋を出ていったあのひとが一人で見ていた、夢みたいにきれいな風景。
ト「昨日僕とあんなコトしといて、すきなひとの自慢かい」
そう言われて、言葉に詰まった。
すきなひと。
一緒にいる時はちゃんとそう思ったのは間違いないしお互いに言葉にしていたけれど、今はわからない。
私達が一緒にいた頃を知っている人たちはみんな、あのひとが出て行って私が一人になった後も私が彼を思い続けていると思っているらしかった。
一緒にいた時、私達はどこでもずっとくっついていたし、あのひとがこの部屋を出て一人になった今も私はあのひとがおいていったものたちと一緒にこの部屋に居続けているわけだから、未練があると思われるのも仕方がないのかもしれないけれど。
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きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» ガムの背中は広くてあったかい☺️ (2022年2月25日 12時) (
レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - 究極の愛の場所はそこなんだなぁと(*´-`)おんぶ( *´艸｀) (2022年2月25日 5時) (レス) id: d5063d2f63 (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» わーん！ブルームーンさん！ご無沙汰していました！ありがとうございます！！ (2021年2月27日 11時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - わぁいいお話…も一回読む♪きりんむしさんの青さんに会いたいなぁと思ってたんです(*^^*)ｳﾚｼｲﾅ (2021年2月27日 7時) (レス) id: d5063d2f63 (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - めろんぱんさん» めろんぱんさん！こちらこそありがとうございます！！！！！！大好きです！！ (2020年10月31日 23時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりん虫
| 作成日時：2020年10月31日 16時
