破れた傘にくちづけ-動物図鑑-

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翌日は、びっくりするくらい体も心も軽くて

あれほど禍々しく見えていた玄関のドアは澄んだ空気を纏っていた。


新しいきれいな空気をたくさん入れたくて、思い切ってドアを開け放したら
ソラがすました顔でピンとしっぽを立ててドアから出てにゃあ、と鳴いたので、勢いに任せてそのまま一緒に外に出る。


出れた、空気がおいしい。


人事部の先輩が「今日は課長休みって連絡が入ってたからおいで」と連絡をくれて、好機だと思った。


追い風が吹いている。

天使が背中を、押してくれた。



会社に着いたら、玄関で待っていた先輩が一緒に会社に入ってくれて、自分のデスクに座ったら今まで見て見ぬふりをしていると思っていた部署の同僚たちが口々に謝ってくれて「上層部に苦情をあげる」とまで言ってくれた。



私は追い詰められて周りが見えていなかっただけで、全然一人ではなかった。


明日、会社で課長と会ったら、今度はちゃんと言おう。きっぱり断る。

「付き合っている人がいますから」と言ってもいいかも。

私の頭の中には、昨夜の優しい天使の顔が浮かんだ。


そんな気持ちになれたのも、昨日の夜そばにいてくれたぬくもりのおかげだ。

胸の下に確かにあった二つそのぬくもりを思い出して、私はとても穏やかな気持ちで仕事にとりかかった。




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