3 ページ19
.
めったに連絡を寄こさない姉が電話を掛けてきたその日は金曜日の夜で
せっかくエースと並んで映画を見ていたのに、途端に憂鬱な気分になる。
姉は自意識高い系の基本上から目線の人で、人の話を聞かない、というか小さい時から私の事は目の端にも入っていないはずなので、わざわざ電話を掛けてくるなんて何か面倒事に決まっている。
「もしもし」
(A、あんた勝手に家に変なの入れるんじゃないわよ)
へんなの？へんなのって、まさか。
「お姉ちゃん、家に来たの？」
(日中用事があったからちょっと寄ったの。そしたらクシャミが止まらなくて。私も兄さんも犬アレルギーなの知ってるでしょ！)
姉と兄は犬の毛にアレルギーがあって、そのせいで昔飼っていた犬のジャックは家の中に入れてもらえなかったし、理不尽に姉たちに邪険にされていたのを苦々しく思い出す。
でもでも、えッ、ちょっと待って！
電話を押さえて横を見ると、エースは何食わぬ顔で映画を注視している。
「あの、お姉ちゃん」
(お父さんの部屋からうなり声が聞こえたから中に入れなくて帰ってきちゃったの。明後日また行くから、どっかにやっといてね犬。話があるからあんたもいてよ)
(あんただけの家じゃないんだからきれいに使ってよ、もう！ていうか、アレ、なんていう種類の犬？なんかオオカミみたいな尋常じゃないうなり声だったんだけど)
お姉ちゃんからの電話はいつも通り自分の言いたいことだけ一方的に主張して切れる。
呆然として振り返ると、エースは相変わらず涼しい顔でこっちを見た。
「エース、今日お姉ちゃんと会った？」
エ「おん。勝手に追っ払ったけど、よかったやろやっぱり」
エ「俺はええ子に番犬したで。でも日曜もまた来るんならどっか行っといた方がええ？」
地獄耳。電話の声が聞こえていたらしい。
「ああ、うん。そうね、、、」
鉢合わせしてたらそれこそ何言われるかわかったもんじゃない。
だからどういう事かわかんないけどお姉ちゃんが「妹が家に男を連れ込んでいる」と思うことなく帰ったんならエースはうまくやってくれたと思う、けど。
お姉ちゃんのアレルギー反応とオオカミみたいなうなり声は、どう説明をつければいいんだろう。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 231人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きりん虫(プロフ) - こあさん» こあさんコメントありがとうございます！来て欲しいけど考えてる事がダダ漏れてたら私は死にますw短編なのに長し！ (2020年10月25日 10時) (
レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
こあ(プロフ) - いつもお話ありがとうございます。律儀に突っ込むジョニーが優しい。わたしも神様とお話ししたい(笑)来ないかなぁ (2020年10月25日 4時) (レス) id: 2691bf805d (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - You∞さん» アーセナルはライオン一択でした！長髪の赤さんビジュが最高！最強！ (2020年10月6日 19時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
You∞(プロフ) - アーセナル…！ライオンを歌う彼の姿を思い出しました…ありがとう…。彼にはやっぱり、歌う姿が似合うのよ…しかもライオン…いかん鼻血が←（テンション高くお届けいたしております） (2020年10月6日 15時) (レス) id: ef0b5894b5 (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» ヨダレパシフィックw w妄想ありアマグランデでした (2020年10月5日 18時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きりん虫
| 作成日時：2020年7月6日 21時
