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「Aさんは、新婦のお友達ですよね。確か情報誌のお仕事をされてるとか」
喋る人もおらず黙々と食べる私を気遣ってか、隣の席の元カレその1が話しかけてくる。
「ええ。グルメ情報誌の編集なので、つい料理に目が行ってしまって」
このレストランを紹介したのも私だ。
食事がおいしくて雰囲気のあるところがいい、と言った新婦のために選んだ。
「えぇ〜、大変ですねぇ。太っちゃいそう。私小食だからゼッタイ無理〜」
赤いドレスを着た女子が、無邪気を装って毒を吐いた。
美味しいものを美味しく食べれないタイプとは元来仲良くなれない。人生損してると思う。
「でも、おいしいお店とか詳しくなれそうでいいなぁ。素敵なお仕事ですね」
「ありがとう」
女子ズの中にも良識のある子がいたらしい。
笑いかけてくれた青いドレスの子ににっこり笑い返したら、何でか彼女の隣の白雪姫が赤くなった。
ほんのり赤くなるほっぺたと手にした赤ワインが、肌の白さを際立たせる。
「食べ方がすごくきれいやな」
アラジンが急にこっちを見てそんなことを言ったので、私はもちろん動揺したし、女子ズは色めき立った。
「やっぱり食べてるとこ写真撮られたりするんですか？」
「えぇ〜、ご飯食べてるとこって恥ずかしくないですかぁ？何かこう、欲望が出てる感じで」
野次馬根性なのか私をディスろうとした結果なのか、多分ここにいる男に食事に誘われる機会を永遠に失ったであろう赤ドレスの女子。
一体会話をどこに着地させようとしているのか。若いって怖い。
「そう？私は記事を書くだけだから、おいしそうに見えるように箸でちょっと持ち上げたりするだけだけど、人のおいしそうな顔見るの嫌いじゃないけどな」
「ああ、手もきれいやな」
さっきまでの人見知りモードはどこかに置いてきたのか、またアラジンが私をまっすぐ見てドキドキするようなことを言ったので場がちょっとシンとした。アラジンの会話も着地が怪しい。おかしな空気になる前に急いで言う。
「ありがとうございます。あの、手、怪我されたんですか？」
イケメンは2人とも左手首に包帯を巻いていた。
シャツに隠れていてずっと気付かなかったけど。
「仕事でちょっと、痛めてもうて」
2人一緒に？
よく見たら2人の席には箸が用意されていた。
怪我した手ではフォークとナイフはきついもんね。ここの銀食器、素敵なんだけどなぁ。
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作者名：きりん虫
| 作成日時：2020年7月6日 21時
