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トッポに連れられて着いた先は、木に囲まれた草原だった。
桜だけじゃなく、いろんな花や緑が混じった草原の真ん中に、大きいビニールシートが敷いてある。
「おう、ご苦労さん」
クリクリの瞳の八重歯の男の人が、気軽に声を掛けてきた。
ええと、初めまして、ですよね。
「やっと会えたな。ジャッキーや、よろしく」
そう言って笑うと、また八重歯がのぞいた。おお、吸血鬼っぽいな。
ジャ「こっちがアーセナル」
A「Aです。よろしく…」
アーセナル、と紹介された男性は長髪のきれいな顔立ちの人。人見知りなのか「ども」と言ったきりそっぽを向いてしまった。
「あの、マックは？」
ジャ「なんか急に仕事入ったみたいで抜けたわ。さっきまでいたんやけど」
またすれ違い。
どうやらガッカリしている自分を自覚していると、また青いインコになったトッポが肩にとまって慰めるようにぴぴ、と鳴いた。
ジャ「突っ立ってないで、座り」
お花見会場はどうやら私達の貸し切りらしかった。
穴場、と言ったところか。結構歩いたし。
人目につかないことにはほっとするけど、同時に落ち着かない気持ちにもなる。
ハロウィンみたいな魔物の宴を思い浮かべる。最後に今日のデザートはお前だ！とか言わないよね。
ア「小鳥やなくてガムと来ればよかったのに」
アーセナルが急にこっちを向いてそんなことを言ったので、意図が読めなくてじっと見つめてしまった。
“小鳥”と呼ばれたトッポは私達の頭上をクルクル旋回し、抗議しているようだ。
ア「咬みつかれそうで落ち着かんのやろ？別に取って食うつもりはないけど」
私の落ち着かない気持ちをガムにどうにかしてもらえば、という事か、と思い当たる。
ガムは人の気持ちを操作できるらしいから。
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作者名：きりん虫
| 作成日時：2020年7月6日 21時
