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忠義を引き留めるために昨日までにごたごたしていた厄介ごとを強制的に片付けて部屋も解約してきたから、今死んでいるのを見つけられても後味は悪くない。死んでから、「逃げた」とか「苦悩して死んだ」とか思われないで済む。
忠義さまさまだな。
ぎしぎしと屋根がきしむ音がして、もしかして本当に家が潰れるかな、と目を閉じたまま思う。
この家は私よりもずっと年上で、私と同じ速さで年を取ってきたんだし。
ぎしぎしはやがて、さりさりになり、がっがっとひっかくような音がして、ごく近くでキツツキが木を叩くみたいな音がした。
“こつこつ”
目を開けて、音のする窓の方を見ると、目に飛び込んできた蛍光黄色のニット帽の下から、まん丸い目がこちらを覗き込んでいる。
びっくりして近づくと、窓の外の人はにっこり笑って玄関を指さした後、こちらに向かって広げた手のひらを左右に開いた。
自動ドアが開くみたいな動き。
ああ。もしかして、“玄関を開けて”って言ってる？
確信が持てないままに玄関のドアを開けると、雪の壁の上から男の人の声が振ってきた。
「いま雪避けるからちょっとドア閉めといてぇ！大丈夫？凍えてへん？」
「大丈夫です。すみません」
どこのどなたか存じませんが。
寒さで喉が閉まって、思ったほどの声が出なかった。そもそも今日は、一言も声を出していなかったかもしれない。
「ごめんなぁ、寒いなぁ。煙突んとこ開いたらまた合図するからぁ」
声を張り上げているからなのか語尾に特徴のある人だ。
言われた通りドアを閉めながら、思わず笑ってしまった。
玄関を開けさせたのは自分なのにすぐに閉めろと言ったり、助けに来てくれたのに私に謝ったり、なんだか変わった人だな。
声の感じからすると、多分年は同じくらいだ。
この辺の人なら、同じ学校出身かもしれない。小中学校の記憶はおぼろで、雪に埋もれた思い出しかない。
どうやら人を呼んでくれたみたいで、窓の外は人の話声や、犬の鳴き声や、雪を踏みしめるきゅっきゅという音、さっきまで静かだったのがウソみたいに途端に賑わしくなった。
その中でもひときわ響く、彼の声。
働かせてしまって申し訳ないけれど、今私にできることはなにもない。
彼のあのかわいらしいキツツキみたいな合図を待って、私はまた毛布にくるまった。
ふふ、と思わず口から洩れた息だけが、蒸気のように一瞬だけ白く浮かぶ。
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きりん虫(プロフ) - 茅香さん» 茅香さんはじめまして。人間味のある橙さんが私のツボです。コメントありがとうございます。 (2020年4月18日 5時) (
レス) id: 04ee5be231 (このIDを非表示/違反報告)
茅香(プロフ) - はじめまして。自分は黒担なのですが、きりん虫さんが描かれる狡いオレンジさんがとても好きです。 (2020年4月18日 1時) (レス) id: 79a5f5eb6c (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさん明けましておめでとうございます！どうも青さんは天からの使者になりがちですね。尊い´д` ;。今年もよろしくお願いします！ (2020年1月4日 8時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - ニァさん» ニァさんはじめまして。コメントありがとうございます！自然と再生が裏テーマだったので季節描写が多かったのですが、楽しんで頂けたならよかったです。また更新中の作品に戻りますので遊びに来て下さいね！よろしくお願いします^ ^ (2020年1月4日 8時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - 暖かい緑さんに包まれたくなります！そしてキツツキさん、彼は鳥さんになりがちですね♪幸せの青い鳥さんでしょうか(*´ω｀*)ﾎﾜﾎﾜ (2020年1月4日 0時) (レス) id: 9f4337f44a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりん虫
| 作成日時：2019年12月21日 17時
