冬虫夏草

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当日は、晴れだった。


「今日は泊まらないで帰る」と言ったら、子供たちは残念そうな顔してくれて、大人たちは意外そうな顔をした。


同行者は隆平さん以外はみんな女性で、見たところ人手は足りている様に見えたけれど、児童館ではそれはいつものことで、始まってみれば『みんなと泊まり』『公認の夜更かし』『みんなで作るご飯』にいつも以上に興奮している子供たちの世話は、いつも以上に大変だったと言っていい。



泊まりがけのボランティアの事を忠義に話したら、忠義はいい顔をしなかった。


そんなのはボランティアの範疇を超えている、親も同行するならAにできることはない、子供よりも早く寝るAに手伝いができると思えない。


ひどい物言いだとは思ったけれど、泊まりになれば未だ忠義とあやしい関係だと信じている同室になった先生やお母さんたちに質問攻めにされるはずで、自分からそこに身を置きたいと思うほど神経は太くなかった。






隆「ほんなら、今日だけお預かりします」


家まで迎えに来てくれた隆平さんは、子供たちを預かる時と同じ文句を忠義に向かって言い、最後まで機嫌が悪いままの忠義に見送られて家を出る。


子供たちの高揚は大人にも移り、子供よりも高揚している隆平さんはしばしば危なっかしい運転で私達の心拍数を上げた。



子供たちと作るご飯、みんなで見上げる夜空、知らない無数の星座、懐中電灯、サプライズの花火。


不意に繋がれるあたたかい小さな手、心細くなってぐずる子供、片付けたそばから散らかる部屋、なんでもないことで狂ったように笑う子供と大人。




私は何かを錯覚しそうになった。









「わたしもAちゃんと帰る」


全部が終わって寝る時間になったら、ホームシックになった子が泣きながら私の胸に顔を埋めてきて、不意に胸が暖かくなった。


おかあさんって、こういう感じなのかもしれない。きっと。

「…一緒に帰る？」


無性に希望を叶えてあげたくなって女の子を抱きしめたまま隆平さんを見たら、彼は少し厳しい顔をして子供の頭に手を置いた。



隆「お母さんに大人になったとこ見せるんやろ」


隆「今帰るのと、明日の朝帰るのと、お母さんはどっちが嬉しいやろうな」



彼の言葉に、女の子はそっと私から離れて布団にくるまった。


その顔は涙でぐしゃぐしゃで、このまま泣きつかれて眠るのかもしれないこの子を抱きしめて一緒に目を瞑ってしまいたくなった。



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