章大・寒中 ページ8
章大・寒中
*
窓が開かない。
前日から絶え間なく降り続く雪で、屋根がきしんでいる音は聞こえていたけれど。
朝起きて開けたカーテンの向こうは雪の壁で、一面の白。窓の下半分が埋まってしまっている。
冬は夜が明けるのが遅いのでまだ暗いけれど、空が白んできたら雪をどうにかしなければいけないと思って、忠義に「着られている」と言われたダウンを着込んで準備している時だった。
頭上で滑走する地鳴りみたいな音とともに揺れるカーテンと窓。
屋根から雪が落ちた。
もう一度窓を見ると、そこはもう隙間なく白で埋まっている。
屋根から落ちた雪が、地面に降り積もった雪と繋がってしまったかもしれない。
雪に圧されて窓は開かない。
嫌な予感がして玄関のドアを開けたら、すぐそこに雪の壁。
つまり、閉じ込められた。
**
今日は大晦日で、忠義は大阪の実家に帰省していた。
戻るのは三が日が過ぎた後で、もしかしたら今の状況を伝えれば急いで戻ってきてくれるかもしれないけれど、それも申し訳ない。
忠義は、年明けからも仕事場兼作業場としてこの家に通ってくることになっていた。
私が家に戻るにあたっての必要な手続きや、引っ越しの荷物の片付け、必要品の買い出しまで、師走の忙しい時に彼に甘えて頼り切ってしまった自覚があって、やっと厄介から解放されて実家でゆっくり休んでいる忠義の手をこれ以上煩わせたくない。
閉じ込められたまま自分で何とかできると思っていたわけではないけれど、幸い買い物をしたばかりで食料や日用品はしばらく問題がないし、待っていれば誰か気づいてくれるかもしれないし。
誰も気づいてくれなくても、年明けには忠義が戻ってくるのだから。
そんなことを考えていたら、電話が場違いな音を立てて短く鳴いた。
“そっち天気やばそうやけど大丈夫？”
なんてタイムリーなメッセージ。
忠義、エスパーかな。
“水道凍らんように気ぃつけよ。ストーブは使うな、排気あやしいから”
“わかった。ゆっくり休んで”
返信して、ストーブのスイッチを切った。
言われるまで気づかなかったけど、煙突の先まで雪だ、もちろん。
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きりん虫(プロフ) - 茅香さん» 茅香さんはじめまして。人間味のある橙さんが私のツボです。コメントありがとうございます。 (2020年4月18日 5時) (
レス) id: 04ee5be231 (このIDを非表示/違反報告)
茅香(プロフ) - はじめまして。自分は黒担なのですが、きりん虫さんが描かれる狡いオレンジさんがとても好きです。 (2020年4月18日 1時) (レス) id: 79a5f5eb6c (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさん明けましておめでとうございます！どうも青さんは天からの使者になりがちですね。尊い´д` ;。今年もよろしくお願いします！ (2020年1月4日 8時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
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ブルームーン(プロフ) - 暖かい緑さんに包まれたくなります！そしてキツツキさん、彼は鳥さんになりがちですね♪幸せの青い鳥さんでしょうか(*´ω｀*)ﾎﾜﾎﾜ (2020年1月4日 0時) (レス) id: 9f4337f44a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりん虫
| 作成日時：2019年12月21日 17時
