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3日後はクリスマス。
この前贅沢したから今日こそは鍋や、と忠義に宣言されたその日の朝、庭は一面、深い雪で覆われた。
来るべきものが来た、という感じ。
雪が積もっても、私の生活は変わらない。
いつも通り、忠義が仕事をしている気配を感じながら、あたためられた部屋で創作に没頭する。
お昼前に章ちゃんが郵便を届けに来て、3人で一緒にご飯を食べる。
午後はまた創作。集中が途切れたらキミ君のカフェで息抜き。
忠「なに、それ」
カフェから帰ってきて、着替えてリビングに出たら、忠義は私の手元を見て片眉を上げた。
「クリスマスだから、もらった」
カフェで出している侯隆ブレンドのコーヒー。非売品。
忠「Aも何か準備してたん?」
「そんなつもりじゃなかったんだけど、メニューを描いてあげたから、そのお礼だって」
「飲んでみる?」
忠「ええわ。今度カフェに行くわ、一緒に」
「仲良くなれると思うよ」
きっと、2人だったら。
本心から言ったのに、彼はあきれた顔になった。
忠「どうやろな」
そんなことより鍋の準備手伝って、と言われて、私は慌てる。
「忠義」
「ご飯の準備の前に、これ」
忠「なに?」
怪訝な顔で、近づいてくる彼。
「クリスマスだから」
忠義はエプロンで手を拭いて、私がおずおずと差し出した箱に手を伸ばす。
その大きい掌の上に、小さい箱を置いた。
忠「開けてええの?」
「どうぞ」
忠義は壊れ物でも扱うように、そっと箱を開けて、中身を取り出して灯りの下にかざした。
緑色に光るシンプルなピアス。
それは雪の下から伸び出てきた芽のように、灯りの下で小さくきらきらと光った。
光を見上げていた忠義の顔がくしゃっと歪んだような気がして、確かめようと思ったのに、次の瞬間には忠義の腕の中にいた。
やっぱり、忠義は大きい。
子供の時にじゃれてくっついた時とは違う、大人の男の人に包まれる感触。
暖かく波打つ自分の鼓動が聞こえる。
忠「不意打ちはあかん」
「いい子は報われる日なのに、プレゼントもらえると思ってなかったの?」
忠「俺もあげたかったのに」
「もうもらったからいいよ、いっぱい」
家のことや、祖父の事。
この家で過ごしていられることは、ここで繋がった人たちの縁はみんな、忠義が私の代わりにここで時間を紡いでくれたおかげで私が得られたものだから。
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きりん虫(プロフ) - 茅香さん» 茅香さんはじめまして。人間味のある橙さんが私のツボです。コメントありがとうございます。 (2020年4月18日 5時) (レス) id: 04ee5be231 (このIDを非表示/違反報告)
茅香(プロフ) - はじめまして。自分は黒担なのですが、きりん虫さんが描かれる狡いオレンジさんがとても好きです。 (2020年4月18日 1時) (レス) id: 79a5f5eb6c (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさん明けましておめでとうございます!どうも青さんは天からの使者になりがちですね。尊い´д` ;。今年もよろしくお願いします! (2020年1月4日 8時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - ニァさん» ニァさんはじめまして。コメントありがとうございます!自然と再生が裏テーマだったので季節描写が多かったのですが、楽しんで頂けたならよかったです。また更新中の作品に戻りますので遊びに来て下さいね!よろしくお願いします^ ^ (2020年1月4日 8時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - 暖かい緑さんに包まれたくなります!そしてキツツキさん、彼は鳥さんになりがちですね♪幸せの青い鳥さんでしょうか(*´ω`*)ホワホワ (2020年1月4日 0時) (レス) id: 9f4337f44a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きりん虫 | 作成日時:2019年12月21日 17時