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庭木が雪で潰れないように板やロープで補強されていくのを、掃き出し窓に座って眺める。
雪囲いは重労働なのに、身長差のある二人が息をぴったりあわせて流れるように動くのを見て、時間の流れを思った。
私が家を離れている間も、この人たちは何度かこうやってここで過ごしてきたのだ、きっと。
ここでも確実に時間が流れている。
その間私にも同じだけの時間が他の場所で流れたはずで、その時間は今の私を作った私の一部だ。
だけど、惜しくなった。
ここで流れた時間を見逃したことを。
祖父の死から逃げてここを見ないようにしていたことを。
「私もやろうかな」
忠「ええわ、邪魔や」
渋「俺の楽しみ取らんといて」
文句を言う時まで息ぴったり。
仲間外れにされた。私の家なのに。
忠「ええから、座っといで」
さらに言い募られて不貞腐れていたら、渋谷さんは私と忠義の顔を交互に見てふわっと笑って私を促した。
渋「電池切れたからお茶飲まして」
****
忠義が不本意そうな顔で黙って作業するのを眺めながら、さっき私が座っていたところに猫みたいにちょこんと腰かけている渋谷さんにお茶を出す。
忠義の嫌いなハーブティー。
渋「これ、そこに生えてるやつ？」
「わかりますか？」
庭先に自生するアップルミント。わざわざ植えなくても勝手に増えて、私を楽しませてくれる。
ここはもうすぐ雪に覆われるけれども、春になればそれぞれが、たくましく自分の力で息を吹き返す。
渋「やっぱりええ庭やな」
「ありがとうございます。今までのことも」
渋「あれも含めて、ええ庭やわ」
渋谷さんが『あれ』と言った先には、忠義がいる。
「ほんとうに」
私は、全部含めて、ここを愛している。
もうすぐここに戻ってきて1年になるけれど、1年をこの家で、忠義と過ごしたことになるけれど。
戻ってきて良かったと、ずっとここにいたいと、心から思う。
渋「俺と結婚してくれたら、俺の庭になる可能性もあるわけやな」
ニヤニヤしながら渋谷さんがそんなことを言って、結婚しようがしまいがもう自分の庭だと思っているのではないかな、と思ったけれど、彼は自覚していなさそうだから言うのはやめておいた。
「結婚はできませんけど、いつでも来てください」
「できれば夜が明けてから、お願いします」
笑いあう私達を見て、忠義がまた不機嫌そうな顔になる。
もうすぐ、長い冬が来る。
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きりん虫(プロフ) - 茅香さん» 茅香さんはじめまして。人間味のある橙さんが私のツボです。コメントありがとうございます。 (2020年4月18日 5時) (
レス) id: 04ee5be231 (このIDを非表示/違反報告)
茅香(プロフ) - はじめまして。自分は黒担なのですが、きりん虫さんが描かれる狡いオレンジさんがとても好きです。 (2020年4月18日 1時) (レス) id: 79a5f5eb6c (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさん明けましておめでとうございます！どうも青さんは天からの使者になりがちですね。尊い´д` ;。今年もよろしくお願いします！ (2020年1月4日 8時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - ニァさん» ニァさんはじめまして。コメントありがとうございます！自然と再生が裏テーマだったので季節描写が多かったのですが、楽しんで頂けたならよかったです。また更新中の作品に戻りますので遊びに来て下さいね！よろしくお願いします^ ^ (2020年1月4日 8時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - 暖かい緑さんに包まれたくなります！そしてキツツキさん、彼は鳥さんになりがちですね♪幸せの青い鳥さんでしょうか(*´ω｀*)ﾎﾜﾎﾜ (2020年1月4日 0時) (レス) id: 9f4337f44a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりん虫
| 作成日時：2019年12月21日 17時
