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なんでいま来るかなぁもう。
目を合わせているのが恥ずかしくて、私はまたテーブルに突っ伏した。
「もしかしてAの彼氏さんですか?飲ませすぎちゃって」
マ「ご迷惑かけてすみません。後は僕が」
「じゃあ、お願いしま〜す」
頭の上でそんなやり取りが交わされていたけれど、私は恥ずかしくて顔を上げることができなかった。
じゃあ仕事でね、とか明日休むなよ、とかいう編集部の人たちの声に顔を伏せたまま手を振ったら、まわりは静かになった。
ちらっと顔を上げたら、目の前にはさっき心の中で会いたいと連呼していた大好きな人。
「…なんで来ちゃったの?」
マ「えッ、何でッ?呼んだやろ?呼んだよな?」
そりゃあ会いたいと思ったよ!思ったけど!
「酔っててみっともないし、いま、会いたくなかった」
ほんとは会いたかったけど。
ていうか一緒にいないときはいつも会いたいし会いたくないときなんてないけど。
酔ってみっともない姿も、馬鹿みたいに一人でうだうだ悩んでる姿も見られたくなかった。
私はまた顔を伏せたので、マックがどんな顔をしているのか見えない。
マ「俺は会いたかった」
ほら、そんなこと言っちゃうし。
どんだけ夢中にさせたら気が済むのよ。今でさえいっぱいいっぱいなのに。
マ「もう勝手に部屋で待ってようかな、と思ったけどいつ帰ってくるかわからんし、待ってるうちに日付変わるのも嫌やったから」
日付?
マ「Aが呼んでくれたらすぐ行くのに、と思ってたら呼ばれた気がしたから迎えに来たんやけど」
マ「仕事の人と一緒に楽しんでたのに、ごめんな」
ぽん、と後頭部に優しい手の感触があって、泣きそうになる。
本当に私の情緒はどうしちゃったんだろう。酔ってるのを差し引いてもちょっとひどい。
「私こそゴメン。ほんとは会いたかったし、みんなにちゃんと紹介したかったのに」
「なんて紹介したらいいか、わかんないし」
マ「…俺、彼氏やないの?」
マ「彼氏さんですか?って聞かれたからおもっきり頷いてもうたし」
マ「Aに好かれてると思ってたのに」
「好きだよ。好きに…」
決まっているじゃないか。
思わず顔を上げたら、ニヤニヤしたマックと目が合った。そんな顔ですら完璧。
マ「やっとこっち見た」
マ「帰ろ」
くっそ、全然勝てないな。
まあ、負けでもしょうがないか。年上だし。
嬉しそうなマックに手を引かれて、私は店を後にした。
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きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» 最高頂きました!ありがとうございます。ちょっと来週からまたここの更新を頑張ります。 (2020年5月23日 6時) (レス) id: 04ee5be231 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - うーん、やばい、最高!! (2020年5月22日 20時) (レス) id: a475b78d7e (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - めろんぱんさん» めろんぱんさんこちらにもコメントありがとうございます!ここの反応が1番ドキドキなので嬉しいです〜! (2020年5月22日 12時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - 朝から泣きましたーーーーー丸山さんはもちろんですが他の方々もみんなぴったりしっくり来すぎてすごい。このシリーズ大好きなので、続くと聞いて狂喜乱舞しております!!泣いたり笑ったり忙しい。。。ありがとうございますーーー (2020年5月22日 10時) (レス) id: b5cc118e0b (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - さくらさん» さくらさんはじめまして!コメントありがとうございます。何回も読んでくれたなんて嬉しいです!不定期更新ですが気長にお付き合いください! (2020年5月16日 21時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きりん虫 | 作成日時:2019年11月25日 18時