金平糖と紫陽花のお茶会 ページ1
金平糖と紫陽花のお茶会
赤レンガ造りの暖炉のなかで、暖かい火がぱちぱちと燃えている。
磨きこまれたマホガニー調の家具、染みひとつない高級そうな壁紙とカーペット、大きい出窓の向こうは緑が生い茂る庭。
外からは、鳥の鳴き声とそよ風の音がする。
絵にかいたような理想のお家。
「素敵な別荘ですね」
褒めてほしい様子を隠せていない目の前のふくよかな熊に似ている奥様にそう言っておいて、私は見えないようにそっと後ろを向いてため息をついた。
暖炉の上に飾ってある奥様とその家族の写真が子供も含めて全員熊に似ていたので、本当はシルバニアファミリーみたいだと思ったことは絶対顔に出してはいけない。
最近流行りらしい、別荘地に有閑マダムが集まるホームパーティー。
世の中にはそんな優雅な生活を送っている人たちがいるのか。
にわかには信じがたかったのだけど、エイトに持ち込まれた仕事の整理を手伝っていたら、ケータリングの依頼の中に、そんなメールが混ざっていた。
「なにこれ」
自分で思った以上に不機嫌に部屋に響いた私の声に、ガムが反応して後ろからパソコンの画面をのぞき込んできた。
ちょっと距離が近い。
ガ「ああ、ええとこの奥さんの集まりやで」
メールには、日時と有名な別荘地の住所、まあまあ高額な細々とした料理の注文。
それに加えて、『今回こそぜひ、マックさんとジョニーさんのお二人にお願いしたい』という見過ごせないあつかましい要求が書いてあった。
ケータリングに指名？ホストじゃないんだから。
ガ「大金落としてくれる上客やで。この前最後にトッポが行って全員ひと回りしたけど、最終的にきれいどころ2人の指名に落ち着いたんやな」
後ろから、どうどう、と言いながら肩をなでなでしてくるガム。憤慨してちょっと鼻息が荒くなってるかもしれないけど、馬じゃないぞ。
それでも、私の意思とは関係なくガムの手のひらから流れてくる、穏やかな感情。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 293人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» 最高頂きました！ありがとうございます。ちょっと来週からまたここの更新を頑張ります。 (2020年5月23日 6時) (
レス) id: 04ee5be231 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - うーん、やばい、最高！！ (2020年5月22日 20時) (レス) id: a475b78d7e (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - めろんぱんさん» めろんぱんさんこちらにもコメントありがとうございます！ここの反応が1番ドキドキなので嬉しいです〜！ (2020年5月22日 12時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - 朝から泣きましたーーーーー丸山さんはもちろんですが他の方々もみんなぴったりしっくり来すぎてすごい。このシリーズ大好きなので、続くと聞いて狂喜乱舞しております！！泣いたり笑ったり忙しい。。。ありがとうございますーーー (2020年5月22日 10時) (レス) id: b5cc118e0b (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - さくらさん» さくらさんはじめまして！コメントありがとうございます。何回も読んでくれたなんて嬉しいです！不定期更新ですが気長にお付き合いください！ (2020年5月16日 21時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きりん虫
| 作成日時：2019年11月25日 18時
