4. ページ13
若そうに、私よりかなり歳下にみえるけどやっぱり……ママなのね。
子どものことを話す彼女は先日より落ち着いて見えた。
「ありがとうございます、お子さん待ってらっしゃるのに来てくれて嬉しいです。でも早めに帰ってあげてね」
「母が見てくれて居るんです。父親がいないんで私が頑張んないとで、はい、来て早々でごめんなさい……帰りますね！」
あっさりそう言われ、なんと返したら良いかわからなくなる。
「あ、はい、お気をつけて、来てくださって有難う」
シングルマザーで頑張っているってことなのね。
こんな素敵な方なのに、相手はいないのかしら？などと下世話な事をつい思ってしまったが、そんなことは口には出さない。
「では皆さん、松本さんお疲れ様でした」
その方、中町さんは頭を下げると颯爽と店を去っていった。
「合流……ではなかったけど、会えてよかった。挨拶したがってたかさ中町さん」
松本さんはニコニコしていた。こうしていると優しくて細やかな気遣いの敏腕営業さんだ。
「はい」
このまま何事もなく会も終わりそうだと思った頃、予想外にハナミちゃんが酔っ払った顔をしていたので声をかける。
「ハナミちゃん飲み過ぎじゃない？」
「て？へーきれすお？」
どう見ても平気そうではないし、呂律も回っていない。
家の方角は私と反対だしどうしようかと思っていると派遣の二人が同じ方向だというので店からタクシーを呼んで三人を乗せた。
「Aさん、さよぉーならー！」
「お疲れ様でした！」
足取りが怪しいハナミちゃんと派遣の二人を送ると……気付いたら困った事に松本さんと二人きりになっていた。
仕方なく距離を取って立っていると、心外だなと笑顔で呟かれた。
「別に悪さなんてしないよ？」
セリフと合わない、目の奥に光を宿してゾクリとする程妖艶な笑みに身体が震えた。だから、すぐに駅の方へ身体を向けた。
これ以上一緒にいるのは何かとよくないと感じたからだ。
「帰ります、お疲れ様でし……」
「だめ」
それなのにあっさり腕を後ろから掴まれてしまった。
「離してください」
「ダメ」
一体何がしたいのだろうと困っていると、松本さんがハァとため息をついた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 935人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
咲詩(さきうた)(プロフ) - りりさん» りりさん。有難うございます(T_T)こちらにまで……やっと終わりました（笑）そうですね、混沌とした世界に射す光がどうか温かいものでありますように。私たちにも彼らにも。素敵な言葉を有難う御座いました！ (2020年1月22日 22時) (
レス) id: 2be9ef90a6 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - やっと読めました！あ、つばきです（笑）たくさん、たくさんの素敵なお話をありがとうございます。これから、鮮やかな彩りに満ちた世界が待っていますように。彼ら5人にも私たちにも (2020年1月6日 23時) (レス) id: 2112e3c25f (このIDを非表示/違反報告)
咲詩(さきうた)(プロフ) - 橘花さん» 橘花ちゃん。いつも本当にありがとう。そうだね、書いてて痛かった笑……でもその傷があるからこそ縁を感じられて大事にできる人になれるんだと思う。完全なる私の願望だけどね笑今まで本当に有難う (2020年1月5日 7時) (レス) id: 1da0056f17 (このIDを非表示/違反報告)
咲詩(さきうた)(プロフ) - 郷さん» 郷さん。そうなんですね……私の場合たまたまこのタイミングになってしまったんですが作品についてのお知らせをメッセージさせて頂きますね。読んでくださって大好きと言ってくださって本当に有難うございます。コメントを読んでいて涙が出ました (2020年1月5日 7時) (レス) id: 1da0056f17 (このIDを非表示/違反報告)
咲詩(さきうた)(プロフ) - めぐぽん(*´･∀･)さん» めぐちゃん。ありがとうこちらこそいつも読んでくれてコメントまでくれて感謝しかないし、大好きだよ。今まで本当にありがとう…… (2020年1月5日 7時) (レス) id: 1da0056f17 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：咲詩(さきうた)
| 作成日時：2019年10月24日 23時
