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とある展示室に来た時、
急にカツンと床を蹴る自分の足音と、妙な静寂が耳に入った。
誰もいないわけではない。
人は疎らに居るのに、なぜかとても孤独感を感じたのだ。
そして、何か不思議な力に吸い寄せられるように近づいた先にあった絵は……
真っ暗な荒野の片隅で両手を天に高く上げた女性の絵だった。
白とも灰色とも言える衣を纏って、長い金色の巻き髪が背中に揺れている。
手はアシンメトリー、右手が高い。その手がまるでこちらに差し出されているようで、思わずその絵に魅せられて手を挙げてしまった。すると
「手は繋げないね……」
知らない声がした。
声のした方に目を向けると、真横で左手を絵にかざしていた男性がいて、同じような姿勢でアシンメトリーになっている自分とその男性に気づき、思わず笑ってしまう。
「……ですね」
さっと手を下ろすとその人が微笑みかけてきた。見れば、榛色の美しい瞳と綺麗なラインを描く鼻梁、横の僅かに引かれた薄い唇の涼やかで透明感のある人だ。
その透明感からか、少し浮世離れして見える。
知らない人だけれど誰かに似ているような、知っているような気になる笑顔だ。
「この絵、お好きなんですか？」
普段なら知らない人に話しかけるなんてしない私だけれど、気付いたら話しかけていた。
「いえ、特には。初めて見ましたよ……駅についたらポスターが目に入ったもんで来ちゃいました」
「え……」
彼の言葉にびっくりしてしまう。同じような人が居るものだと。
「貴女は？すごく熱心に見て回ってましたよね、この画家のファンですか？」
「いいえ……嘘みたいですけど、私も駅でポスターを見てふらりと寄ったんです」
後出しだと嘘くさく聞こえるかなと思ったけれど本当の事なので告げたら、その人は唇を綺麗に三日月のようにして笑った。
「縁、かな。僕も営業先だったんで普段は降りない駅だったから不思議ですね……フフフ」
「そ、そうかもしれませんね……」
ドキッとした。エニシだなんて、言葉がこの人から出たこと、そして話しているととても落ち着いている自分にびっくりした。
奇妙な気分を抱き、どうしていいかわからずにいたが、取り敢えずその人に向かって頭を下げる。
さようならと言うのもおかしいし、ただ頭を下げてその人から離れるしかなかったのだ。
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咲詩(さきうた)(プロフ) - はるちさん» はるちさん。コメントありがとうございます！まぁ、以前から読んでくださっていたなんて嬉しいです！解説員も愛してくださってありがとうございます。私にとっても思い入れがありますので嬉しいです。 (2019年6月21日 15時) (
レス) id: 2be9ef90a6 (このIDを非表示/違反報告)
咲詩(さきうた)(プロフ) - なおちさん» なおちさん。お久しぶりです、いつもありがとうございます。(´∀｀*)ｳﾌﾌ偶然も奇跡ですよねぇ。移転先については青い鳥さんで今回お伝えした通りですのでどうぞまた宜しくお願いします。コメント嬉しかったです！ (2019年6月21日 15時) (レス) id: 2be9ef90a6 (このIDを非表示/違反報告)
はるち(プロフ) - はじめまして。コメント書かせて頂くのは初めてですが、お話は以前から読ませて頂いてました。久しぶりの咲詩さんのお話で色んな二宮さんを思い出して何度も読み返しちゃいます。プラネタリウムの二宮さんとか夜空を見上げると思いだしたりして…。懐かしいです。 (2019年6月20日 17時) (レス) id: 041d0ce1ae (このIDを非表示/違反報告)
なおち(プロフ) - 久々の咲詩さんのお話！めっちゃ嬉しいです。私もここでまさかの出会い、再開に感謝です。主人公ちゃんの出会いも偶然だからこそ、奇跡。移転先、念の為もう一度教えて欲しいです！またたくさんお話に出会いたいです。 (2019年6月19日 22時) (レス) id: 4cd26d7ff0 (このIDを非表示/違反報告)
咲詩(さきうた)(プロフ) - 栞さん» 栞さん。コメントありがとうございます！ものすごく久々にこちらに書いてみましたよー……他の場所の件はすでにお話済かな？まだのようでしたらメッセージ致しますのでお声掛けください┏○))ほっこりしていただけて良かったです！ (2019年6月19日 22時) (レス) id: 2be9ef90a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：咲詩(さきうた)
| 作成日時：2019年6月17日 0時
