38.身近な恋のお話 ページ38
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「三戸今日時間ある？」
休憩中部長が私に声をかけてきた。
特にこれといった用事も見つからなくて「ありますよ」と一言言うとホッとした様子で立ち去った。
なんとなくムッツリーニに違和感。
この前行ったし言い回し的にも飲みに行くって訳でもなさそう。
なんの用件だろうとか気になりながらも企画書の作成を進めた。
で、あっという間に就業時間。
スマホには部長から新着メッセージ。
『ビル下のカフェで待ってる』
『了解です』
返事もして私もカフェに向かう。
あまり帰りにあそこのカフェ行かないから新鮮。
朝にコーヒー買うくらいか。
カフェに着くと部長がこっちだと手招きした。
「お待たせしました！」
「待ったわマジで」
「倒置法でより待たせた感が出てくるのでやめてください〜」
「ツッコミがうざい〜」
あはっと笑って部長の真向かいに座った。
「本日はどのような案件でしょうか」
「恋愛っていう哲学な案件」
「え」
え、恋愛っていう哲学な案件？
つまり恋愛話？部長が？私に？？恋バナ？？？
「こ、恋バナだと…？」
「単刀直入に聞くけどお前の好きなやつって昨日の男？」
「え？昨日の男…って？」
「俺がお前の事家に送った時に階段とこに居たからもしかしてって」
察しが良すぎやしませんかーー！！！
うわー！！そいつですそいつー！！
部長がエスパーすぎて危なく叫びそうになった。
口をおさいでコクコク頷くと「やっぱか」と低い声。
「昨日その男の話で泣いてたのに今日はその男の話で泣くどころか嬉しそうにするんだな」
「え、嬉しそうにしてました？」
「ニヤけてる」
「えっうそ」
「もしかして付き合うことになった？」
「エスパー！」
「分かりやすいんだよ！」
あわあわする私と呆れる部長。
そんなに私の表情筋がゆるゆるだったとは盲点。
しっかりしろー！と頬っぺをつねってると部長の手のひらが私の頭に乗った。
「良かったな」
「…はい。昨日は本当にご迷惑おかけしました」
「ホントだよお前は全く…」
ぐしゃぐしゃ雑に撫でられる。
髪の毛崩れてるからもう気にしないけどもじゃもじゃになるー！
「わしゃわしゃしすぎですって！何扱いのつもりですかこれ」
「うーん……ペット」
「悩んだ末に！ワン」
「あはは。全然従順じゃねぇけど」
くしゃって部長が笑った。
カフェから出て別れ際部長が何か言いたそうにしたのをやめて「ありがとな」って言った。
私は何の感謝か分からないまま手を振り部長に背を向けた。
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作者名：きりりん
| 作成日時：2017年12月8日 9時
