34.氷が溶けて ページ34
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「さーとーし！」
「やぁーだ！」
んぐぐ…っ
なんていう馬鹿力なんだろう。
耳を塞ぐ智の手が私の力じゃ全然動かない。
「…じゃあ分かった。塞いでても聞こえるように言うからちゃんと聞いてよ？」
「…」
「私ね智が好き」
「……は？」
「聞こえた？」
「…幻聴？」
智がポカーンって顔して耳を塞がなくなった。
「なんて聞こえた？」
「好きって」
「うん」
「俺今まで振られてたじゃん…」
智がなんでと言わんばかりの顔をした。
「確認なんだけどさ智は本気で私の事好きだったの？」
「本気だわ。いつになったら信用してくれんの」
ムッとした表情。
でも目が本気。
嘘がまるで見えなくて今度こそすぐに受け入れた。
智は本気じゃないと疑い深かった心が溶けた。
片想いのブランクとかもうなんでもいいや。
智が本気で居てくれてると知った今もう迷うことはない。
「今したの」
「もうぅ…遅いんだよぉ…」
うぅってうめき声を出しながら頭を抱えた智がすごく可愛くて触れていいものか迷ったけど耐えきれずふわふわな髪の毛に触れた。
「なんだよぉ」って枯れた声で見上げてきたから少しドキッとして戸惑ったら突然ぎゅって抱き寄せられた。
智とのこの距離が初めてじゃないのに自分史上一番どきどきする。
「両想いなの？え？なんなの？」
「あははっ、なんなのって」
「だって俺ずっと本気で好きだって言ってんのにAが本気だって認めなかったじゃん。なんで急にOK出したんだよ」
「智の目が本気だったしさっき好きなやつのこと諦めんなって智が言ったから」
「はぁ〜？…んもぉ分かんねぇ。んじゃ俺は良いとしてAは俺の事好きなの？」
「好きだって言ってるじゃん」
「昨日言ってた相手が俺なの？」
「うん」
私をバッと体から離してはぁ？って顔を思いっ切りされた。
「俺なら当たっても砕けねぇべ」
「ずっと智が冗談で好きって言ってると思ってたから」
「なんなんだよぉ〜」
何故か悔しそうな顔の智。
てことはあれだったのか。
思えばずっと両片思いだったんだ。
そりゃ悔しい。
もっともっと前からこうやってイチャイチャ出来たのに。
近くで触れ合えたのにって悔しい。
そう考えてたら私も自然と唸り声が出た。
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作者名：きりりん
| 作成日時：2017年12月8日 9時
