18.ベージュ色の君 ページ18
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アパートに着いて7時だった。
共用廊下を歩いているとばったりとスーパーの袋を持った風間くんを見付けた。
ビシッと着こなされたスーツ。
まとめられた髪の毛。
それにスーパーの袋ってなかなかのギャップ。
思わず釘付けになってガン見してると気付いたようで、
「Aちゃん、おかえり！」
「ただいま、風間くんもおかえり？」
「そうそう」
帰りに桜庭さんからおつかいも頼まれてさ、と風間くんはレジ袋を小さな顔の横に持って見せた。
なるほど、おつかいだったんだ。
「てことは桜庭さんの手料理食べれるんじゃ」
「多分ね！」
桜庭さんが私、風間くん、智の誰かにおつかいを頼むときは大体手料理を振舞ってくれる時。
桜庭さんの手料理を愛する私達は二人でニンマリ顔を見合わせた。
「じゃあ俺桜庭さん家に届けてくるね」
「行ってらっしゃい」
私もさっさと着替えようと急いで部屋に入る。
スーツを脱いでゴムが伸びきったジャージを持った時だった。
たまにベランダ側のカーテンって締め忘れちゃうよね。
それがいつもはなんてことない日常として済む話なのに。
今に限って、
「ぎゃぁぁああ！？」
雄叫びを挙げた私の視線の先には、
ベランダの窓越しにポカーンって顔をした智が棒立ちでいた。
智の視線は完全に私の顔ではなく色気が微塵も感じられないベージュな下着にいっていた。
もうなんで今日に限ってベージュなのおぉぉ！？
そもそもなんで智がベランダに…？
ここそんな階高ないけど一応2階だよ…？
総じてなんて日だ…小峠になりそう。
ショックと恥ずかしさで頭の中がスクランブル交差点になりながらも俯いて急いでジャージに着替える。
どんな顔して話せばいいのか。
意を決して俯いてた顔を上げて窓を開けると何故か智は顔を手で覆っていた。
「あの、智さん？」
「カーテン…」
「あっごめん…ちょっとベージュとかありえなかったよね」
「そうゆう話じゃねぇ」
気づくと顔を覆ってたはずの智の手が私の頬に触れた。
それだけなのに、昨日のキスとか思い出したりして無性にドキドキして顔が見れなくなる。
はぁとため息が斜め上から聞こえた。
「どうすんの？もし俺が狼になっちゃったら」
「狼？」
「おめぇ食われんぞ、俺に」
智は私が知らない妖艶でオトコの顔で低い声でそう言った。
それだけでありえないくらい心臓がうるさくなって、
智の澄んだ瞳に捉えられた時、
ピンポーンとインターホンは鳴った。
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作者名：きりりん
| 作成日時：2017年12月8日 9時
