11.ムッツリーニ ページ11
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19時現在。
部署内に残っている人は私と部長と小栗くんくらいで他の皆は定時上がり。
企画書の作成に取り掛かってて順調に進んでるって言う人沢山いたし、納得。
一応智にはごめん、遅れるってLINEを送った。
「んじゃ、お疲れ様」
「お疲れ様」
小栗くんがスッキリした顔して部署を出ていった。
大手製菓メーカーの製品企画部が私の仕事場。
私が今頭に思い浮かべなきゃいけないのは
どんなお菓子なら沢山の人に食べてもらえるか。
けどずっと浮かぶのはあの人の顔。
そう、きよしの顔。
脳内でずっとズンドコ節歌ってる。
静まれ脳内きよし！って何回思ったことか。
途中諦めたけど。
そんなこんなできよしに囚われながらなんとか案を絞り出そうと頑張ってる。
「糖分補給」
うーんと頭を抱えてたタイミングで
櫻井部長が自社製品のチョコを差し出してくれた。
「ありがとうございます」
通称：ミスターパーフェクト。
仕事も出来て優しいイケメンな部長は絶大な信頼と好意を寄せられてる。
好意に関しては敬愛のみならずやっぱりこのお方に惚れる人も沢山居る。
まあ、そりゃそうだよね…
だってほぼ完璧なんだもん。
ムッツリってとこ以外は。
「ムッツリーニ三世…」
「誰がムッツリーニ三世だよ」
「どっかにいい案落ちてませんかね」
「まず周りからの声を聞くのがいいんじゃねぇの」
「…なるほど」
「今回のターゲットは高齢層も視野に入れるから幅広く声聞けよ」
幅広く、つまり万人受け。
自分だけの意見と思考だけを注いでもきっといい商品はできない。
だったら確かに声を聞くのが一番の近道かもしれない。
「やっぱ部長のアドバイスは流石ですね」
「大したこと言ってねえんだけど」
「大したことなんです、ムッツ部長」
「せめて統一しろよ！」
「ふふ、尊敬してますよ部長」
少し笑い混じりで私がそう言うと部長はクリクリなお目目をもっと丸くした。
それからふぅーっと一息。
それはため息？ロングブレスなの？
「…ほら、もう良いんだろ。今日は帰れよ」
「はーい」
パタパタと帰る準備をすませる。
途中何だか部長の視線を感じるのは気のせい？
「ではお疲れ様です」
「ん、気を付けて帰れよ」
一礼して部署を出た。
部長の一声もあっていい案が浮かびそうだし
何だか大丈夫な気もしてきた。
ありがとう、我らがムッツリーニ！！
オフィスビルを出てぶわっと北風が吹いた。
ふとフワフワな智の顔を思い出す。
やばいな、早く会いたい。
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作者名：きりりん
| 作成日時：2017年12月8日 9時
