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Aはすぐに時計を確認した。現在15時23分。20時に戻るってことは…と逆算して、あと7時間もない!と答えを出したAはすぐに伝票を持って会計を済ませる。ありがとうございました〜という呑気な店員の声を背中に受けながら、今にも走り出しそうになる足を無理やり歩かせて向かった(走っているのはエレガントではない)のは、男子禁制・煌びやかな女の花園───ランジェリーショップである。


「前失礼いたしますね〜」


 物腰柔らかなお姉様がAの胸元に手を入れる。脇や背中からほとんどないと言っても差し支えないほどの贅肉を集め、カップの中へとしまい込む。くっきりと綺麗に出来た谷間をどこか誇らしげに見たお姉様は、「少しサイズが小さいようですわ。ワンサイズ上のものをお持ちいたします」と呟いた。
 白い肌にマシュマロ以上に柔らかで豊かな胸。Aは自分の体の手入れまで余念がなかった。微塵も垂れずに美しい形をキープしたバストは、いつもランジェリーショップの店員の下着魂に火をつけるのである。更に彼女は縦にうっすら割れた腹筋と、美しいクビレまで持つ。これほど下着姿の似合う女が他にどこにいるだろうか。Aもそれは十分に分かっているので、フィッティングルームの姿見を見て「アタシって何を着ても美しいのね…」と自分で惚れ惚れしていた。

 結局は新しい下着を2着セットで買い、担当してくれたお姉様にお礼を伝え店を出た16時40分。Aは、わたしったら何してるのかしらと我に返り足を止めた。

 20時に戻るって言ったって、別に部屋に尋ねてくるとも、ましてや会いに行くとも言われてないのに。そんな時間にお酒を飲みながら二人で話すにしたって、そんな手の速いことはないだろうと。つまり買った下着を見せるまでに至らないはず。なにしろこの二ヶ月、たまに互いの体温に軽く触れるだけで、キスすら一度も───


「彼氏とチュ〜してないの!? もう1ヶ月じゃん遅すぎじゃない?」
「えーそんなヤバい? 大事にしてくれてるってことじゃないの」
「いやチュ〜はするでしょ、いくらなんでも」


 脇を通り過ぎる女子高生たちのタイムリーな話題に、Aの心臓はドクドクと音を立てた。だって、確かに彼女もそう思ったから。真面目に男と付き合ったことの無いAでも、成人した大人が2ヶ月も手を繋ぐだけで終わっているなんて、一体どこの箱入り娘かという話である。

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落蕾 - 沢山更新されていて、歓喜しました!一話一話に文字数も多いので、読みごたえがあって、やっぱり大好きです!これからも応援してます! (4月5日 0時) (レス) @page28 id: 32354343cf (このIDを非表示/違反報告)
アボカドサラダ(プロフ) - 落蕾さん» いつもコメントありがとうございます。今回はまだ明るいお時間にお読みくださったようで、安心しましたᵔ-ᵔ 今後ともよろしくお願いいたします。 (12月20日 18時) (レス) id: cf05fdb6e7 (このIDを非表示/違反報告)
落蕾 - 更新して頂き、ありがとうございます!!おかげさまで、喉が潰れるまで叫びました!!とても面白かったです!これからも応援しています! (12月19日 15時) (レス) @page19 id: 32354343cf (このIDを非表示/違反報告)
アボカドサラダ(プロフ) - りんねさん» コメントありがとうございます。いちばん好きだなんて、とても勿体ないお言葉です( ; ; ) これからも応援していただけると嬉しいです。 (12月16日 20時) (レス) id: cf05fdb6e7 (このIDを非表示/違反報告)
りんね(プロフ) - いちばん好きです!!!応援してます!!! (12月16日 19時) (レス) @page17 id: daaae51289 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アボカドサラダ | 作成日時:2022年10月10日 14時

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