【中原中也】純真無垢乙女なのでキスできない【文スト】

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「やっぱり沖縄…、でも折角2週間もお休みをいただいたし、海外は？ ちょっと大変ですか」
「別に構わん。が…、いや待て、海外って具体的にどこだ」
「イギリスとか…ノルウェーも素敵。オーロラが見たいの。ニューヨークも久々に行きたいです。一番行きたいのはハワイ」
「台湾は」
「アジアはここ2年ほど出張で何度か行ったからあんまり…。台湾がいい？」
「いや、日本とは風景をガラッと変えてェから却下だな」
「ならどこに行きたいんです」
「イタリアは。ワインとピザ食いてェ」
「わ。え、賛成。行きたいですイタリア。行ったことないかも。ワインはあんまり飲めないけど」

　無理を承知で鴎外へ申請した2人の休暇。さすがに駄目かと思われたが、中原と松葉杖をついたAを見るなり「Aくんもう退院したの？ 早かったね。休みを取るんだろう。構わないよ」とあっけらかんと言われてしまった。繁忙期でなかったのが幸いしたのだろうか。
　無事に2週間の休暇を取得した2人は現在、どこへ旅行へ行くか考え中である。どうやらイタリアで決まりそうだ。

「決まりだな。イタリアって何時間かかンだ。時差も結構あるだろ」
「調べます。…フライトが14時間、時差が8時間ですって」
「なるほどな。早朝と深夜の便どっちが良い」
「前日の深夜から行けませんか？ それで行っても着くのはお昼過ぎになりますけど」
「深夜便な…航空会社に拘りは？」
「別にありませんけど、直行便があるなら日本の会社を。出張はアジア圏ばっかりだったので、毎回使ってました。お姐さんも確か同じように」
「姐さんはマイレージの貯まり方 桁違いだろ。見るのも怖ェよ」
「ふふ」

　イタリア。Aが行ったことのない国。フィレンツェにミラノにローマ。ヴェネツィアにナポリ。どの地名を聞いてもお洒落で粋な感じがする。ワインは得意ではないけれど、本場のパスタやピザに心躍らぬわけがない。
　ラウンジの高級なソファにもたれながら、中原は素早くタブレットを操作した。

「…ミラノかローマにしか直行便出てねェし、外資だけだな、飛んでンのは」
「何でも結構ですよ」
「どーすっかな…乗る便は分けなきゃなんねェしな」
「あ、忘れてました」

　マフィアでは、○○(例えば幹部、準幹部)付補佐官 以上の人間が航空機で移動する際は乗る便を分けなければならないと決められている。これは万が一事故があった場合、そして乗っていた人間が死亡した場合のマフィア側の損失を避けるためである。

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