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「まあ正直、武器だけでも間に合ったら万々歳ではあるけど……」
「ふふ。多分ねぇ、出来上がってると思うよぉ。あの人Aちゃんのお洋服、ずっと作りたがってたからぁ」
「だといいな〜。まさか夜中の発注で翌日の朝までに仕上げろって、そんな無茶なお願いをあんな笑顔で聞いてくれるとは思ってなかったし…」
「あ。ほらぁ、噂をすれば」
爺さんの店から右に50メートル、早朝なのにえらくニコニコした男が、手に紙袋をぶら下げて立っている。こちらに気付くと、さらにその笑顔は濃くなった。
「Aちゃんっ、これ。これ、あの。アハ! 作った。僕が作ったから。ちゃんと6時間で。約束通りでしょ。ねっ。偉い? アハ! 作ったから」
「え、偉い。すごい。…え? コワ」
「フフ。知ってるよ、えらい。アハ! 知ってる。これ。作ったから…アハ! 着てね。すごく良く作れた。アハ!」
「あ、ウン。ありがとうございます」
「ウフ。また来てね」
「ハイ…」
痩せこけた体に黄土色の皮膚と、小刻みに左右に震える顔。深く窪んだ目元には、辛うじて右目だけが備わっていて、左目は空洞になっていた。生気がないので年齢の検討もつかない。更に紙袋を受け取った時に香った、ものすごく強い線香の匂い。仏壇で少し焚く分じゃつかないような強さである。
「ね、出来上がってたでしょぉ。あの人、いつもすごく仕事が早くて丁寧なの。しかもセンスも良くてぇ…」
「あの人いつもあんな…何か…アハ!って」
「あぁ…あのねぇ、あの人、3年前に奥さんと娘さんを事故で亡くしちゃってからぁ、ちょっとおかしくなっちゃったみたい。可哀想だよねぇ」
「…そうなんだ」
「うん。あ、でもねぇ、あの人の前でその話しちゃ駄目だよぉ。…自分の目、くり抜いちゃうからぁ」
コッワ。
声が出るすんでのところで飲み込んで、Aは冷や汗を垂らした。
「さ! これでもう揃ったよねぇ。早く行かなきゃ、集まる時間までにもやることいっぱいあるんでしょぉ?」
ニコ!ととてつもなく可愛らしい顔で微笑むミチコちゃんに思わず顔が解けそうになるが。
考えてみれば、あんなのと知り合いのミチコちゃんも結構エゲついな、と考えるAであった。
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アボカドサラダ(プロフ) - 抹茶あいすさん» 嬉しいお言葉を沢山ありがとうございます! そうですよね、私も甘い対応が多いと思うのですが夢主はそう思ってないみたいです笑 これからもよろしくお願いいたします! (2022年7月25日 19時) (レス) id: cf05fdb6e7 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶あいす(プロフ) - そんな素振りなかった、みたいなこといってますけどだいぶ甘かった気がするのは僕の気のせいでしょうか?こういった話はあまり読まないのですが、文章が読みやすくて、面白く読ましてもらってます!!更新頑張って下さい!! (2022年7月25日 16時) (レス) @page45 id: f01e2a172c (このIDを非表示/違反報告)
アボカドサラダ(プロフ) - 白ちゃんさん» お読みくださりありがとうございます! (2022年7月21日 18時) (レス) id: cf05fdb6e7 (このIDを非表示/違反報告)
白ちゃん - 面白かったです。 (2022年7月21日 18時) (レス) @page41 id: 0a2f8cc4e7 (このIDを非表示/違反報告)
アボカドサラダ(プロフ) - ゆなんさん» 憧れだなんてありがとうございます! 夢主も喜んでいます。文章についてもお褒め頂き嬉しい限りです。マフィアは大変ですが実力さえあれば大量の金銀が手に入る世界ですからね^^ 頂いた言葉を胸に更新頑張ります! (2022年1月21日 8時) (レス) id: cf05fdb6e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アボカドサラダ | 作成日時:2021年9月18日 12時