34 桃 ページ34
そして、あの日ラウールくんを救いに屋上へ行くと
阿部亮平がいた。
やっと会えた。
どうしよう、フルネームで呼ぶのも…
あべちゃんでいいか。
そして俺があべちゃんって呼べばびっくりしている。
初対面っちゃ初対面だけど、
あの現場を目撃した人の兄で
証拠を撮った本人で
だいぶ前に君を救った人の子供だ。
多分あべちゃんは自分を誰が助けたかは知っているけどまさか俺の両親なんてな。
でも、なんであべちゃんはあの時入院していたか今も知らないらしい。
お医者さんが喋ることはないって言ってたし。
俺があの時言った恩返しとは
数日前俺は久しぶりにあの病院を訪れた。
医者「佐久間くん。久しぶり」
佐久間「実は、阿部亮平くんと高校一緒です。」
医者「阿部くん？彼は今どんな感じだ？」
佐久間「頭良くて人気者です」
医者「それは良かった…実は佐久間くん、これは言うべきかなって思って…」
佐久間「え？」
医者「実は君のご両親があの先生に注意しに行った時、阿部くんもあの先生からあの先生の家に呼び出しをされていた。だから阿部くんもあの現場にいた事になる。」
佐久間「え…」
医者「それで、先生は君のご両親を刺したあとどこかへ逃げた。その後通報したのは阿部くんだ。そして、少しでも生きててほしいと阿部くんが応急処置をしていたんだ。ご両親にね。」
佐久間「えっ」
医者「だから、阿部くんの通報がなければあの先生は狂って色々な人を刺してたかもしれないし、実は即死じゃなくて病院に運ばれるまではご両親は生きていたんだ。だから事件のことも聞けたんだ。」
佐久間「阿部くん…」
医者「彼はまだ記憶が戻ってないだろ？」
佐久間「はい…」
医者「こんなこと医者が言っちゃいけないと思うが、彼の記憶は戻らない方がいいのかもしれない。佐久間くん、阿部くんと仲良くしてあげて…」
その話を聞いて俺は心の底からあべちゃんに感謝した。
いつか、恩返しがしたいとも思った。
あの場であべちゃんに恩返しって言ってしまったのはあれだったけど少しでもあべちゃんの役に立つことしたかった。
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作者名：喜梨果 | 作成日時：2021年1月2日 10時
