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ドクンドクンと蠢く音。
人によって捉え方は違うかもしれないが、
何かの繭や卵のような、肉の塊のようなどう言い表したらいいか分からない。
だがその存在感は圧倒的なものだった。
「うわぁぁぁ・・・・?!こ、これ何・・・?!」
「・・・これを、見せる為に俺達を誘導したのか?」
驚きの声をあげるチャクロとは反対に冷静に言葉を発するオウニ。
だがその表情は少し歪んでいた。
「これは何だ?答えろ」
「・・・」
「リコス・・・?」
静かにその巨体を見つめると傍に歩み寄り、その手を添える。
それに反応するように、ドクンと鼓動が応える。
「・・・“リコス”は私の名前じゃない」
「え ―?」
「リコスはこの魂形− ヌース ― と呼ばれる生き物の名よ。この生き物は人間の“感情”を吸収して喰べる」
「感情を・・・」
「・・・私達は・・・この船は、感情をこの“リコス”の栄養分として与え続けていた」
だがそれ以上チャクロもオウニも言葉が出せなかった。
それ以上に紡がれていく彼女の言葉を理解することに、
世界の一つの欠片を知ることだけが精一杯だった。
「私達の心はのっぺらぼう。彼らは天から飛来したと言われている、魂形を発見した人々は感情を彼らに預けることにした」
― 人々は立場や身分によって多かれ少なかれ、感情を魂形に付与する ―
― 人の感情は世界を滅ぼすから、必要のないものだから ―
― 貴方達が知りたがっている外の世界は ―
― 感情の希薄な人達が、心のない人形兵士を使って ―
― いつ終わるともしれない戦争を続けている世界―
「― さっきの私の仲間達も戦争で皆死んだのよ。ねぇ、貴方達の求めるものは私達の世界にある?」
「リコス・・・」
「・・・」
「・・・、帰って、私を置いて。この船はまた砂の海を流されて、去っていく。」
― 私は一人でこの船で死ぬから ―
リコスのその一言が重く深くチャクロの胸に響いた。
「・・・これが・・・・」
「オウニ・・・?」
小さく呟いた言葉にチャクロはオウニを見れば、
オウニはその手を強く握りしめていた。
「・・・これが、アイツの・・・俺がユネを連れ出したいと願った世界か」
「・・・“ユネ”、あの囚人のことね」
「― 何?」
返ってきたその言葉は、オウニにとっては初めての単語。
だがその言葉は決して良いものではない。
それだけはすぐに理解できた。
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霧花(プロフ) - 美海-miuna-さん» 美海-miuna-様。再びコメント本当に嬉しいです!最近は更新できず、楽しみにして頂いてるのに、すみません(TT)ゆっくりでもちゃんと最後まで書こうと思ってるので、長い目で見守ってください!(^^)ここから物語がある意味始まるので、頑張ります! (2018年2月23日 17時) (レス) id: 7d4352a5a2 (このIDを非表示/違反報告)
美海-miuna- - 霧花さん» 再びコメント失礼します!更新楽しみにしてました!読んだ今、オウニがあぁぁああ!!という状態です笑読みながら涙してしまい、ますます今後の展開が気になります!! (2018年2月17日 13時) (レス) id: f365a2d487 (このIDを非表示/違反報告)
霧花(プロフ) - 美海-miuna-さん» 語り出したら止まらないです(笑)こうして、クジ砂という素晴らしい作品を通して、色々な方々と交流できて、本当に幸せです(*^^*)更新には波がありますが、今後も頑張ります! (2018年2月7日 0時) (レス) id: 7d4352a5a2 (このIDを非表示/違反報告)
霧花(プロフ) - 美海-miuna-さん» 美海-miuna-様。コメントありがとうございます!凄く嬉しいです(^^)やっと2人を会わせられました!長かったな、と私もしみじみ感じました(笑)美海-miuna-様は舞台クジ砂も好きなんですね!私も大好きです(*^^*)舞台、アニメ、漫画、全てのオウニが素敵過ぎて! (2018年2月7日 0時) (レス) id: 7d4352a5a2 (このIDを非表示/違反報告)
美海-miuna- - やっとオウニと主人公が関わるところが読めて嬉しいです!霧花さんの書くオウニもとってもかっこよくて、惚れてまうやろー!!って状態です(笑)この先どうなるのか楽しみにしています! (2018年2月6日 19時) (レス) id: f365a2d487 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霧花 | 作成日時:2018年1月19日 17時