4 ページ16
.
談話スペースに行くと、草川先輩が大きめの紙袋を抱えて座っていた。
あたし達はいつもの席に座り、お弁当を広げる。
「うわ〜、たくちゃんすごい量だね」
草川先輩が抱えている紙袋の中身は、全部チョコだった。
「彼女が居ても関係ないっぽい」
「あの噂、本当だったんですね」
バレンタインに1日で持って帰れない量のチョコをもらうっていう噂。
こんな光景を眼の前で見たのは生まれて初めてだった。
いつものように雑談をしながらお弁当を食べて、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴るまで過ごす。
「あたし達、次移動教室なんで行きますね」
「バイバイたくちゃん」
「ん、また」
あたし達は席を立って、談話スペースから出て曲がったところで止まった。
「忘れ物したから、先行ってて」
草川先輩にチョコを渡すために。
「うん、わかった」
あたしは、小走りで草川先輩の元に戻ると、ちょうど席を立ったところだった。
「草川先輩！」
「ん？」
「あの……」
あたしは黄色いハートの箱を差し出す。
「チョコ、もらってください」
「…………」
草川先輩は、あたしが持っている箱を見つめる。
あたしと草川先輩の間に沈黙が流れる。
「……これ、佑亮のじゃないの？」
「いいんです、チョコ苦手なの忘れてたので」
「……いや、受け取れない」
草川先輩は、箱をあたしの方に押し返す。
「佑亮のために作ったんだろ？
だったら、佑亮にあげなよ。佑亮も待ってると思うし。他の奴のこと考えながら作ったチョコもらっても嬉しくねーし」
草川先輩はそう言って、優しく笑った。
「ほら、授業遅れるぞ」
あたしは箱をトートバッグの中に渋々戻し、軽く頭を下げて教室に戻った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 553人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こいずみ(プロフ) - ももさん» ここまできたら卒業書くしかないですね……笑 (2018年9月18日 11時) (
レス) id: 497c91c86c (このIDを非表示/違反報告)
もも - これは高校卒業時期の話が気になります…楽しみに待っています (2018年9月17日 2時) (レス) id: c60f7736c8 (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - ももさん» わあああまたコメントくださってありがとうございます！！癒しだなんて、、ちょいちょい更新していきます！ (2018年9月5日 9時) (レス) id: 497c91c86c (このIDを非表示/違反報告)
もも - 続きが更新されてる！！ありがとうございます！待ってました。本当にこの小説癒しです (2018年9月4日 19時) (レス) id: c60f7736c8 (このIDを非表示/違反報告)
こいずみ(プロフ) - HYさん» ありがとうございます(;_;)！！リクエストまで……！！考えてみます！！嫁の尻に敷かれるユースケくん想像できすぎますね笑 (2018年2月5日 23時) (レス) id: 497c91c86c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こいずみ | 作成日時：2017年8月12日 12時
