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たくちゃんとビデオ通話で相談して決めた服装。
白のボトルネックのシャツに、黒のコーチジャケット。
Aとのデートの日。
モールの映画館には、待ち合わせ時間の5分前に着いて、柱に寄りかかって村田祐基の本を読んで待つ。
本当に擬音が多い。
『ボールはバシューンって飛んで行った。』とか、『バビューンシュパー！』とか。
もはや何の音なのかわからないし。
多分そのうち擬音語辞典とかできると思う。
そろそろ待ち合わせの時間で、僕は人がたくさんいる中を見渡す。
「……あ」
Aと視線がぶつかった。三つ編みをして、黄色のワンピースを着ているA。
いつも以上にすごく可愛くて、僕の頬が緩む。
Aが近づいて来て、「おはよう」と言った。
「……今日、すっごい可愛い」
僕がそう言うと、Aは顔を赤くして口をキュッと結んだ。
「あたしは毎日すっごい可愛い！！」
Aはそう言ってズカズカと発券機の方に歩いて行った。
昨日、僕が名前を読んだ時と同じ反応。照れてるんだなって思って、僕は少し笑いながらAの後をついて行った。
発券したチケットをもぎってもらってシアター内に入ると、たくさんの人が座っていた。
こんな中でカップル席に座るのが少し恥ずかしい。
予約したのはたくちゃんで、僕達じゃない。
そう、僕は悪くない。
一生のうちにこんなところに座るなんて思わなかった。
僕達の前のカップル席の人は密着しているけど、僕にそんな勇気は無い。
シアター内が暗くなり、予告がいくつか流れた後、映画が始まった。
僕も稜雅さんみたいな声だったらもうちょっとマシなのかなぁ。
主人公のヒサキちゃん、可愛いなぁ。ちょっとだけ雨宮先輩に似てる。雨宮先輩、元気かな。他の先輩達は今どうしてるんだろう。
そんなことを考えていたら、映画はもう終盤で、ヒサキちゃんが泣きながらした愛の告白に僕の涙腺が崩壊した。
映画が終わって、シアター内が明るくなる。
「……まだ泣いてんの？」
「だ、だって……」
ヒサキちゃんの恋が実ったんだもん！！
泣かないほうがおかしい。
Aにポケットティッシュを渡されて受け取る。
「ありがとう」
まだ一度も使われていなかったポケットティッシュを、僕はすべて使い切ってしまった。
はぁ……申し訳ない。僕、男なのに。
「今度、ティッシュお返しするね」
「え、いいよ。ティッシュなんか家にいっぱいあるし」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
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作者名：こいずみ | 作成日時：2017年7月20日 14時
