▽ ページ12
・
声を出そうとするけど、何故か引き攣って出ない。
「……っあ」
辛うじて出た声は、全然言葉にはならなくて。
「及川……？」
岩ちゃんの声が、震えてるのが分かる。
近付いてきたのが分かる。
それだけ、この部屋は静かで。
心配になったのか、顔を覗き込んできた。
「……おい、どうしたんだよ」
俺の顔を見て、驚いたような言葉を発する岩ちゃん。
「何で、泣いてんだよッ……！」
苦しそうに、何かが分かった様に、声が強張ってる。
「いわちゃ……。ど、しよッ」
かく言う俺も、相当キテるみたいで。
溢れる涙は、留まる事を知らないかのように流れ続ける。
震える手を無理矢理動かして、急いで彼女に電話をかける。
呼び出し音が、酷く虚しく感じて。
「早くっ、出てよ……！お願いだから、出てよ！！」
俺の悲痛な叫びが、部屋に木霊する。
何で。何で出ないの。
諦めそうになった次の瞬間。
――プツッ。
そんな音がして、呼び出し音が切れる。
「出たッ！！」
その言葉に反応するように、岩ちゃんが顔を上げる。
少しだけ、期待した顔。
急いでスピーカーにして、言葉を待つ。
でも、現実はそんなに甘くないようで。
「……もしもし」
少し掠れた、若い女の人の声。
「妹の、知り合いですか」
出たのは、俺の大好きな“A”の、お姉さんだった。
疑問符がないあたり、分かっているのだろう。
お姉さんの声が少しかれてたり、言葉の合間に鼻を啜る様な音に、鼓動が早まっていくのが分かる。
「Aの、彼氏です」
改めて家族に言うのは緊張するだとか、そんなことは言ってられない。
今はそれだけ、緊急事態で。
Aは……？と、不安になりながらも聞く。
「A、は……ッ」
たった今、亡くなりました……ッ！！
お姉さんの、泣きじゃくる声が響く。
「子供を庇って轢かれてッ！」
ゴトッと、スマホの落ちる重苦しい音がした。
「あ、あぁ……」
ピシッ……と、心にヒビが入った気がして。
パリンッ！と音を立てて、今。
「ああああああああッ！！」
修復不可能なまでに割れた。
「Aッ……、A！！」
岩ちゃんが何を言ってるか分からない位に、俺は混乱していた。
何も考えられなくて。
俺は倒れる位まで、泣き叫んでいた。
……もう、どうでもいいや。
最後に見えたのは、岩ちゃんの焦った顔だった。
そこで、意識が途切れた。
To be continued……?
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜雨-sagume-(プロフ) - 花っち�擦気�» あっ、あっ、ありがとうございます！！更新はノロマですけど頑張りますっ！！！ (2020年2月13日 9時) (
レス) id: b20b2dae4d (このIDを非表示/違反報告)
花っち�� - 奇病系初めて読んだんですが…面白いですね、せつないお話大好きです。ありがとうございます。 (2020年2月6日 18時) (レス) id: a210479166 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜雨さん | 作成日時：2018年11月27日 0時
