Wind Blowing in Joetsu. 8【新幹線変形ロボシンカリオン】 (ページ45)

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「それって……」

頼まれたアズサはごくりと息を呑み、

「"撮り鉄"ってやつですね！？」

……少し外れた答えを返した。まさかの返しに出水は苦笑するしかなかった。

「……そ、そうとも言うかな……？」
「ふふん、それなら任せてください！行ってきまーす！」
「あぁ、行ってらっしゃい」

出水からの頼み事を引き受けたアズサの行動は早かった。「何処かに良いスポットはないかな～？」乗り気でさっとその場を去り、漆黒の新幹線の撮影をする為に足を早めた。彼女のその足取りは風船のように軽かった。

『……なるほど、敵を誘き寄せる作戦ですか』

再び一人になった出水に、また別の少女が話しかけた。

「……おや、シオリ君。どうしたんだい？」
『あぁ、いや、訓練の休憩中でふら～っと歩いてたら偶然会話を耳に入れてしまって』

シミュレーションの息抜きに少しぶらぶらと研究所内を歩いていたシオリは、偶然二人の会話を耳に入れていた。

『……それで、敵を誘き寄せて黒い粒子のサンプルでも取るんですか？』
「……驚いたな、その通りだよ。今の会話からよく分かったね」

普通は今の会話からではそのような事は分からない。しかしシオリは、黒い粒子の存在を微小ながらこの研究所内で感じたようである。

『いや、はは……。若しかしたら敵の事を知る為に研究してるんじゃないかな、と思いまして』

───しかし、詳しく知る為にはサンプルがまだ足りない。

そうですよね、と問い質すと出水は頷いた。

「敵のエージェント・スザクがシャショットに接近した時があっただろう？」
『あの時ですか』

非常にシャショットが面倒くさかった記憶がある、先月末にあった出来事をほわんほわんと思い浮かべる。あの時はシャショットが敵の口車に乗せられ、危うくハヤトとシャショットの関係が破綻するどころか、E5が破壊されることになりそうだったが危機は脱した……というものだった。

敵が此方に一番接近してきたのはその時だった。それを今度は逆手にとって、出水は利用しようとしている。