出水の作戦 ページ44
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「出水さーん！」
「……！」
研究所の廊下を歩く出水の背中に、彼の名を呼ぶ少女の声が当たる。
どうしたのかと振り向けば、運転士ではないが最近よく研究所を出入りしている少女、アズサだった。
「やぁ、今日も見学に来たのかい？」
「違いますよ！チームシンカリオンでメッセージのグループを作ったんです！」
そう言って、まだ"よろしく〜♡"という一言しか入っていないメッセージグループの画面を見せる。ふむ、とその画面を見つめて出水は思ったことをぽろりと口にした。
「名マネージャーといった具合だね」
「む……出水さんまでやめてください！私だってシンカリオンに乗りたいんだから〜！」
運転士達と同じような事を言われてむっ、と頬を膨らませる。シンカリオンに乗りたい、というのは無論"シンカリオンを踊らせてみたい"というだけで、戦いたいわけではないのだ。しかしそれを知らない出水はふ、と笑う。
「訓練を受け適合率を上げれば、君も運転士になる機会はあるよ？」
「……いや、別にそれはいいんです。ハヤト達に張り合うつもりはないですから」
「あ、ないんだ……」
彼女はこういうところが大変素直だ。そうだったのかと出水は苦笑する。
「基地の中だけでもいいから、ちょこちょこ〜っと乗せてもらって、ちょこちょこ〜っと撮影させてもらえれば良いんです！あ、勿論今すぐ公開はしないですよ！いつかシンカリオンが公表される時、ドキュメンタリー番組を作りたいから今から追いかけておきたいんです！」
「それを聞いて安心したよ」
スマホをビデオカメラの様にして、出水に向けて掲げながらアズサはもしもの未来を語ると、出水はニコリと微笑んだ。
……ふと、彼の目がアズサの持つスマホのカメラレンズに向かう。
───待てよ、この方法なら…………上手くいけば……
「……じゃあ、一つ頼みを聞いてくれるかな」
「はい！」
「漆黒の新幹線を撮影して欲しいんだ」
巨大怪物体が出現する前には必ずと言っていいほど漆黒の新幹線が出現する。
新幹線が走ることの出来る標準軌区間だけでなく、E6系秋田新幹線やE3系山形新幹線、在来線といった狭軌区間も走れる漆黒の新幹線は、度々一般人の目にも触れる。
その際は"黒い新幹線"でお馴染みのE3系現美新幹線と間違われる事が多いのが不幸中の幸いであるが、よくよく見れば形は違ったりしている。
そんな漆黒の新幹線を撮影して欲しい、出水の意図は果たして───？
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作者名：ゆっきー | 作成日時：2020年2月15日 13時
