Wind Blowing in Joetsu. 8【新幹線変形ロボシンカリオン】 (ページ29)

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あとで確実にミハルだけでなく大人達からも怒られそうだな、と呑気な事を考えているが甘い思考は一切持っていない。しかし、自分は死に行くわけではない。事態を早々に終わらせる為にしているのだ。

ほんの数十秒で思考を巡りに巡らせた結果、シオリはこのような行動を起こした。これほどの覚悟は余程の事が無い限り出来ないだろう。下手をすれば死の淵に自ら足を踏み入れる行為だからだ。

【っ……、…………は、……呆れた】
『……！……これ、』

乾いた小さな笑い声がミハルから零れた。怒りが一周どころか何周も回って呆れた。それから更に、キーボードを叩く音が耳に届いた。
突如、シオリのインカムから繋がる目を覆う為に備え付けられたスキャナーにとある画面が映し出された。

【太平洋沖の略地図と《ノブナガスイグン》、E4の位置情報を送ったよ】

紺色透明のパネルに引かれた青白い一筋の線は南近畿、四国周辺といった陸地と太平洋との境目を表している。そして太平洋を西に進む二つの動点は《ノブナガスイグン》とE4の現在地を表していた。
己の感覚だけを頼りに敵を追いかけ、追い詰めようとしていたシオリにとっては予想もしなかったサプライズと言うのか、手助けだった。

【……聞き分けの悪い姉さんに、何を言っても仕様がない】
【ミハルくん、本当にそれでいいの……？！】

フタバは、溜息を吐きながら語るミハルにシオリの今の行動を止めなくていいのかと問うた。ギリッ、と奥歯が軋む小さな音が聞こえる。ミハルは良くない！と声を荒立てた。

【勿論良くないですよ！全く持って良くない！……けど、こんな覚悟、普通は出来ません。…………出来ないですよ。……あの短い間に】

だから俺はその覚悟に賭けます、悩みに悩んだ末に出された彼の意思がその短い一言に込められていた。

【……絶対にやる事をやって】
『……ミハル、それ死亡フラグ』
【………………】

死亡フラグだと指摘されて黙り込んだミハル。そっとインカムの向こうで目を逸らした様子がシオリの中で思い浮かばれ、クスクスと肩を小さく揺らしながら笑った。

『ボクは敵を海中から大阪湾に追い詰める。N700Aは地上から新大阪方面に向かって』
【分かった。……抜かるなよ】
『抜かりませんけど、』

───どうしてミハルといいリュウジといい、みんな死亡フラグを建ててくるんだ……？

スキャナーに映る位置情報と己の感覚を頼りに、E4は敵を追いかけ追い詰め、海中を西へ進んで行く。