Wind Blowing in Joetsu. 8【新幹線変形ロボシンカリオン】 (ページ27)

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崩れ落ちたE4はN700Aによって支えられる。ミハルの心配する想いも込められた怒号が耳を貫いた。
腕と手に流れる激痛に耐えながら、肩で息をして呼吸を整える。
出来るかな、と思っていたのに。情けない、少し期待してしまった自分に笑った。

(……嗚呼、分かっていたのに反吐が出る)

【……してやられたな、三原君】
【出水指令長！】
【捕縛フィールドは水中には展開出来ない。まさか、そこを突いて来るとは……】
『……水中には、展開出来ない……』

大宮支部から今回の戦闘を見ていた出水によって明かされた、"捕縛フィールドは水中には展開出来ない"という事実。

捕縛フィールドは宇宙空間にある人工衛星から発射される光線、光子───即ち素粒子によって展開される。詳しい事を物理的に言えばややこしくなるので、捕縛フィールドは単に光の膜だと考える。
大気中でその形(球状)を維持出来ても、水の中と大気中とでは屈折率が違う。異なる媒質を通る時に、光の持つ波の周波数は変わらずとも速度が変わる為に進行方向を変えてしまう。

つまり水に浸かった光の膜は、大気中で球状を保っていても水中に入った瞬間に光が進行方向を変えて球状が保てなくなり、形が崩れてしまうから展開が出来ないのだ。

……というのはあくまで一つの推測だが、恐らくはこのような理由だろう。

否、これは今は関係ないことだ。それより、逃げられたらたまったものでは無い。どうするか、最善策は……───

『……追いかけて、敵を追い詰める』
「……は？っ、おい、動いたら……」
『もう大丈夫』

突然、意味は分かるが訳が分からない事を呟き、E4は支えとなっていたN700Aから離れて歩き始めた。
だが大丈夫には見えない。何故なら足元はおぼつかず、腕を支えながらフラり、フラりと歩いているからだ。腕に流れた衝撃は足にも流れていた。足はピリ、と少しの電流が流れた程度だが、普通に歩くのには少し難しい。それでもゆっくりと海面に近付いていく。近付く度に海面は振動で小刻みに揺れる。

「待っ……、消えた……？！」

瞬間、E4が姿を消した。直後に水飛沫が立ち上がった。敵が飛び込んだ時ほどでは無いが、そこそこ大きい水飛沫だ。

【え？……まさか、海中から追いかけるつもり？！】

何をしでかすか分からない、姿の消えたE4とその直後に立ち上がった水柱から、姉がやろうとしている事がミハルには理解出来た。否、"理解したくなかったけど理解してしまった"という方が正しいのか。