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「母さん、入るよ」
ドアをスライドさせて部屋に入り、後ろに続く様に姉妹も失礼しますと入る。中に居た女性、カエデは自身の息子の後ろに居る二人の少女を見てお客様かしら？と首を傾げたところで、ある一点を見て目を見開いた。
「……あら！貴女、浦佐さんの娘さんのシオリちゃん、よね？」
そう言われてシオリも、否、リュウジとマフユも目を見開いた。初めまして、と言うつもりだったのに既に知られていた様である。いや、カエデの口振りからして既に会ったことがある様だった。しかし全く覚えが無い。親だけの付き合いではなかったのか。
『……えっ！？は、はい……浦佐 シオリです』
「やっぱり！透き通る様な銀髪に、紅い右目……よく覚えているわ。ふふ、大きくなったわね。其方はマフユちゃんかしら」
「……あ、はい！浦佐 マフユです！……あの、お姉ちゃんの事、知ってるんですか……？」
何故カエデがシオリの事を知っているのか。否、互いの両親が知り合いだったので知っている可能性もあるが、若しかして……。マフユが問いかけると、カエデはニコリと微笑んだ。
「えぇ。覚えてないかしら……確か最初に会ったのは、リュウジが生まれたばかりの頃だったわね。浦佐さん家が出産祝いだって、当時入院してた病院に来てくれたの」
『出産、祝い……』
そんな事あったかな、と記憶を巡らす。目の前に居る少年の出産祝い、となると大体十四年前、つまりシオリがまだ2歳の時の事だ。2歳の時、2歳の時……と頭を捻りながら記憶を探り出す。
『……あっ……断片的ですけど、そう言えばあの頃……病院に行った記憶があったりなかったり……します。その時、かな、丁度名古屋に住んでた時だし……』
「……俺は記憶に無い」
『それは……ね』
本当に断片的な記憶だが、そんなことがあった気がしなくもない。明確な記憶は無いが、面影あるかもとシオリが言えばリュウジは過去の事を出すなと顔を逸らした。
するとクスクスとカエデの小さな笑い声が聞こえてくる。
「あら、そうじゃなくても何度か会ってるわよ。リュウジ、覚えてない？例えばタツミが生まれたばかりの頃とか」
「タツミの……？」
母にそう言われてリュウジもまた、記憶を巡らせる。だがこれも十二年も前の事だ、覚えている方が難しかったりする。
＿＿＿＿
ま さ か の
シオリちゃんのこのあやふやな記憶は後々の話にも繋がります……
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作者名：ゆっきー | 作成日時：2020年2月15日 13時
