帰路 ページ29
話を終え、帰路に就く浦佐兄弟。日はとっくの昔に暮れ、今はもう夜の時間真っ只中だ。
三月の夜、春に入ったとはいえ吹き付ける風は寒く、その冷気は身体につん、と突き刺さる。
「うっひょぉ上着持ってきといて良かった〜。三月つってもまだ冷えるな」
「……くしゅん！」
「お、マフユ起きてたのか」
もぞもぞとカイジの腕の中でマフユが動いたと思ったら、小さな可愛らしいくしゃみが聞こえてくる。カイジの隣を歩くシオンがマフユの顔を覗き込むと、その瞳は開かれていた。
『起きてたのか、って……。マフユ、出水指令長とヒビキさんと話をし始めた時からずっと起きてたけど、……まさか気付かなかった？感覚鈍った？』
「え？……本当に？狸寝入りしながら話聞いてた？」
そうシオンが尋ねるとマフユはこくりと頷く。
「……今日、改めてみんなの話、お父さんとお母さんの話を聞いて、凄いなって。お父さんから、みんなにやって欲しいことあったのは知ってた……でも、私のは知らなかった。……私にもやって欲しいことがあって、ちょっと嬉しかった」
カイジの腕の中で、小さくぽつりと話し始めるマフユ。「私にもやって欲しいことがあって、ちょっと嬉しかった」……やっと、大好きな姉と兄達の力に自分もなれるかもしれない。今までは遠くから見ていただけだが、それでも心の内では"干渉しないこと以外"で何処か力になりたかったのかもしれない。
「てきごうりつ、があれば、お姉ちゃんと一緒の事をして欲しい……お姉ちゃん、どうしたら……良いのかな」
『へ？あ……えっと……』
突然話を個人的に向けられて、またその内容が自分でも正直よく分からないものであったのでシオリは考える素振りを見せる。
他の兄弟も並大抵の人に比べて適合率が高い傾向にあるが、それでも何故自分だけが更に高い適合率を持つのか、それは分かっていない。ただ、子供の方が比較的適合率が高い傾向にある、高適合率を持つ者は、その血縁関係者もまた適合率が高くなりやすい。ここまでしか分かっていない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆっきー(プロフ) - とまさんさん» 感想ありがとうございます！文字書きが好きであっても、文系が苦手であるが故に文書にあまり自信がなかったのでとても励みになります…！ (2019年9月6日 15時) (
レス) id: 4e3b74874d (このIDを非表示/違反報告)
とまさん(プロフ) - 文書や設定などがしっかりしており、そちらの面でも非常に勉強になりましたと共に読み応えのある文書だと感じました。まだ全てを読み終えていませんので、また読み終えたら詳しい感想を書かせて頂けたら幸いです。 (2019年9月6日 12時) (レス) id: 5e6944cfc9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっきー(プロフ) - かなとさん» あっ………続編移行したところでオリジナルフラグは新しく付いてしまうんですね……報告ありがとうございます！ (2019年8月19日 21時) (レス) id: 4e3b74874d (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年8月19日 21時) (レス) id: 1346ef8349 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆっきー | 作成日時：2019年8月19日 21時
