今際の約束（デンジ） ページ1
一体、俺はいつ死ぬのだろう。
デビルハンターという職業柄、悪魔と戦うので常に死とは隣合わせであるし、俺の心臓に成り代わったチェンソーの悪魔──ポチタを狙っている奴らも多いと聞く。
実際、何度も何度も殺されかけて、死んだことも数えきれないほどにある。
しかし、それは本当に「死んだ」と言えるのだろうか。
俺は、胸のスターターを引いてもらいさえすれば簡単に生き返ることができる。
また、起き上がって動くことができる。呼吸ができる。美味いメシも食える。
ゲームでいうところの、『つづきから』ができる。
俺に今まで訪れてきた死は、言わば偽物の死だ。
かつて姫野先輩や荒井に訪れたものとはだいぶ異なるものなのだろう。
あいつらには、引けば蘇ることのできるスターターもなければ、続きもない。
死んだらそこでおしまいなのだ。
フツー、怖いんだろうな。死ぬのって。
シリアスなことを考えるのは性にあわないが、目の前に瀕死の同僚に横たわっていられては、どうしても考えずにはいられなかった。
同僚、Aは、苦しそうな声をあげる。
「……ねえデンジくん、私、死ぬのかな」
Aの胸からはドクドクと血が流れていて、ワイシャツを真っ赤に染めあげていた。
悪魔に割かれた肺が相当痛むのか、呼吸はゼェゼェと荒い。
パワーから聞いたことがある。
人間は体重の8パーセントの血液が体の外に出ると死ぬらしい。
8パーセントというのがどれくらいかだなんて検討もつかないけれど、きっと、それくらいの量はとっくに出血しているに違いない。
それくらい、Aの出血量は酷かった。
すぐに救護要請を出しはしたが、治療が間に合うとは到底思えなかった。
「あーー……？多分、死ぬかも」
「あははっ、そこは嘘でも大丈夫だって言ってよ」
沈黙が流れて、遠くからサイレンの音が聞こえた。
きっと、本部からの応援だ。
ふいに、Aが口を開く。
「……私、まだ死にたくないなぁ」
「俺だって死んでほしくねぇ。日本からツラの良い女が減るのは嫌だ」
「はは、デンジくんらしいね」
笑ってはいるが、Aの体は小さく震えていた。
「死ぬの、怖えの？」
「そりゃ怖いよ。ひとりぼっちになっちゃうもん」
「ひとりぼっちじゃなけりゃあ、怖くねえの？」
「そしたら怖くないのかな、よく、わかんない」
「……じゃあ俺、一緒に死のーか？」
Aは少し驚いたような顔をしたあとで、声を出して笑った。
そして、すぐに首を横に振る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 196人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちえ - アキくんの夢もまだ少ないのでこれから楽しみに待ってます (2022年10月15日 23時) (
レス) id: 0560ab194e (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - チェンソの夢はまだまだ少ないので嬉しいです！とても面白かったです！キャラクターの思考や話し方なんかがとても自然で楽しく違和感無く読めました。次回を楽しみにしています。差し支えなければ、マキマの夢が読みたいです。女夢主であればどんな話でも嬉しいです。 (2021年7月8日 0時) (レス) id: 979541037a (このIDを非表示/違反報告)
肩サラダ(プロフ) - チェンソーマン大好きなのでこういう短編集がすごく嬉しいです、、！最高です！！リクエストをお願いしたいのですが、ビームくんで女主のお話を書いて欲しいです！お時間ある時で構いませんのでよろしくお願いします！ (2021年2月11日 20時) (レス) id: dfa81ef2dc (このIDを非表示/違反報告)
切れ端(プロフ) - ドコサヘキサエン酸さん» コメントありがとうございます！もっと良いものが書けるように頑張りたいです；；本当そう思います！アニメ化がきっかけになって、もっと増えたらいいな…… (2021年1月10日 0時) (レス) id: f24ed74d9a (このIDを非表示/違反報告)
切れ端(プロフ) - あるみくさん» コメントありがとうございます！嬉しいです…！更新頑張ります！ (2021年1月10日 0時) (レス) id: f24ed74d9a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：切れ端 | 作成日時：2020年4月20日 11時
