ポアロ ページ9
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ポアロのカウンター席の1番端は、すっかり私の定位置になりつつある。
透は嫌がっていたがどうしても気になることがありポアロには頻繁に顔を出すようになった。
「おまたせいたしました。アイスコーヒーとハムサンドです」
みんな大好き安室さんは誰がどうみてもいい人で、とても組織の人間とは思えない。
ビルで助けてくれた人。間違いなくあれは彼で、彼もあそこで出会ったのは私だと気づいているだろう。しかし、お互いあの日ついて口に出すことはなかった。
彼のことをもっと知りたい…
知らなくてはいけない…
彼は黒なのか白なのか、はっきりさせたくて仕方がなかった。
「……さん?…Aさん?
どうしたんです?ボーッとして」
『あ…いえ…。今日も素敵な笑顔だなと思いまして』
「ありがとうごさいます。Aさんこそ、髪をアップにしているのもとてもよく似合っていますよ」
『あ…ありがとう…』
ポアロでの、いつもより饒舌な彼にペースを乱されることにはまだ慣れない。
敵か味方かもわからない相手にも関わらず、彼らの傍は居心地がいい。近すぎず遠すぎず、なんとも言えない温かさがある。
そもそも敵か味方かとはなんだったか…
私はずっと組織の人間で
彼らも組織の人間で
そうなると彼らは味方で
でも私は組織の人間を恨んで滅ぼしたくて
だから組織の人間は敵で
でも私は…組織の人間…
彼らがNOCであればいいと思う反面
彼らがNOCなら彼らにとって私は敵で
でも…彼らに潰されるならそれも……
答えのでない
答えのない問題が
最近いつも頭を支配する。
「やぁコナンくん!いらっしゃい」
「こんにちは〜」
もう1つの気になること…
ベルモットがシルバーブレットと呼ぶ彼。
江戸川コナン…いや、工藤新一。
ベルモットがどうして彼を気にかけているのかはわからないが、透もまた、彼をとても気にかけていることは一目瞭然。
『ほんとコナンくんは安室さんと仲良しだね』
この2人は良好な関係なのか?そうなるとやはり透は…
「うん。でもAさんと安室さんも、仲良し…だよね?」
『そうみえるなら…そうなのかもね』
…きっと彼は私を組織の人間だと疑っている。
いや…既に知っているのか?
落ち着こう。
今までも1人で慎重にやってきたはずなのに、
少しみえかけた可能性を、希望の光を、
見失わないようにと焦っていた。
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作者名:chi | 作成日時:2022年8月4日 10時