出会い ページ3
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こんなにも満月が綺麗な夜は久しぶりな気がした。
この辺りでは1番高いビルだからか、手を伸ばせば届きそうな距離にある月。
私のせいで両親はこの世からいなくなり、今日私が盗んだデータでまた誰かがいなくなるのかもしれない。
そう考えただけで止まらなかった涙と吐き気も、今はもう感じることはなくなった。
悲しいや辛いという感情がなくなったわけではない。
ただ、もうどうでもいい。
私もこの世からいなくなれば楽になれるだろうか?
でも
私が楽になることなんて許されるのだろうか?
『…………綺麗…』
どんなに汚れていても
綺麗なものを綺麗だと思えることに心が弾んだ。
月に手を伸ばし一歩前にでる。
もっと近づきたい。
その輝きで
私の中の汚い部分がなくなればいいのに…
そう思い、また一歩前にでる。
『アッ…!!』
足が空を切った時、怖いという感情は一切なかった。
これでやっと終わる…
あの世で待っているのが地獄だったとしても
現状から解放されることへの安心感に目を閉じた。
「なにをしている!!!!!」
強く体を引かれ気づいた時には床に倒れていた。
目を開けると上に覆い被さるように倒れた男の人に怒鳴られる。
「もう少し遅ければ君は今頃…ッ『これ…地毛なの?』
……は??」
彼の言葉を遮り髪を撫でる。
『今日の月と同じ色ね……綺麗な色…』
彼が誰なのかなんてどうでもよかった。
どうせ上からの命令で差し向けられた私の監視役か、
もしくは………
『ねぇあなたは、
黒?
それとも
白?』
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作者名:chi | 作成日時:2022年8月4日 10時