鼠の嘘吐き灰被姫

二十四刻 ページ26

世界は、本当に不思議なことが沢山起こる


そして不公平なこともある


私は幸せになりたい



其れは決してかなわない



正義は私を見放した



では悪なら？




時計の針が十二時を指す




灰被り(ゾールシュカ)の魔法が解ける時間だ


全てが終わる時間



でも、其れは本当かな



灰被り(ゾールシュカ)が幸せになったのは



魔法が解けた後



王子様が姫を見つけ出すんだ



でもそれを幸せと感じるのは



“二人が愛し合っていたら”の話だけどね。




『Магия была решена(魔法は解けた)!

Принц идет искать тебя(王子が君を探しに来る)

я буду счастлив(幸せになるんだ)Золушка(シンデレラ)


Смерть и любовь ждут(死と愛が待っている)，


Прямо там(すぐそこにね)』





さざ波の音を耳に入れて早一時間はたつ、少し頭痛も引いてきた


いつの間にか、片耳が軽くなっていたことに気づく
どこかでイヤリングを落としてしまったのだろう、

イヤリングが片方無くなってしまったのは残念だったが、生きて船に乗るところまでこれて本当に良かった


彼は私の居場所の目星はつけただろうか…


僅かに恐怖を感じつつ私は胸ポケットに入っている携帯を取り出そうとする


そのときふと、胸ポケットに違和感を感じた



中に入っていたのは入れた覚えの無い一切れの紙



「なんだろう……」




その紙に書いてある文字を見て


私は絶句し、辺りを見渡した



敵の様子は無い、




その紙には不器用な日本語で




『愛しています、Aさん』




と書かれていた


気味が悪かった、何故彼がそんなことを私に伝えるのか



訳も分からずにただ、何故か私はずっと…その文字を見つめて



意味を考え続けた


記憶のどこかでまた、誰かが私の名前を読んだ気がした



一章【終幕】

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