十六刻 ページ18
「有難う」
ラスコーリニコフにかけた感謝の言葉は日本語だった、なぜ母国語で話したのかは分からない。
何故か其れを彼に伝えるのが凄く恥ずかしいことのような気がした、只の照れ隠しだ
取り乱した時に上がった鼓動と息を抑えるため、ポケットから何錠か薬を取り出して其れを無理に水と共に押し流す。
ラ「大丈夫か?」
何時も通りのジトリとした目を向けたラスコーリニコフに似合わない僅かに心配そうな声が少し悲しかった。
「ねぇ、ローヂャ…頭目ってさ…何が目的なんだろうね」
ラ「其れが分からないから俺はあの人について行かないんだ…理由も分からない虐殺に意味は無い。というより、其れを知って如何する??」
先刻とは打って変わった咎めるような声に威圧を感じつつ私は迷わず話す
「私の故郷が…頭目の計画の標的なんだ…」
ラ「!??そうなのか…?」
「まだ決行までは大分時間があるみたいだけど…其所には…私の…大切な人が居るの」
ぐっと拳に力を入れる
「だから、私は如何しても生きて帰らないと___。」
ラ「…」
部屋の中に正午を知らせる時計のオルゴールが鳴る
そのメロディーは、何時もと同じ筈なのに如何しても暗く重たい気がした_______
______________
ラスコーリニコフが自室に戻り、一人になった私は一人考えていた。
この頃自分が余りにも情緒不安定だ、と。
今迄潜入先でこんなことはあまり無かった、仕事と私情は混ぜない主義だからだ
少し気持ちが揺れたり、優しくされると悲しくなることはあったけど、過呼吸になったり脈拍が異常なほどに狂ったりはしなかった
落ち着いていればいるほどしっかりとした考えを持てるのに…
これは誰かの異能力…?だとしたら厄介だ。
でも何故か違う気がする、これは私の本能からの警告なのかもしれない
私はその自身の勘に従うことにした、
もうずっと、安吾さんに会っていない
あのいじめっ子達にも、勿論会いたくは無いけど
昔のことを思い出しているとやはりあの少年が思い浮かぶ
優しく賢い彼…
何故か其の姿がフョードルに重なった
そしてまた私の名前を呼ぶ記憶の中の少年
『Aはぼくの_____』
″その時、私は何かを思い出した″
″其れが何だか分からない″
″塞ぎ込まれた記憶の扉が開きかけたのに″
″私は思い出したくなかった″
″知ってしまえば″
″戻れなくなるから″
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かな(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです…応援してます! (2022年12月22日 4時) (レス) @page41 id: a32747b1ee (このIDを非表示/違反報告)
リリ - お話がどタイプです!!!!ぜひ続きをよろしくお願いします*_ _) (2022年8月22日 19時) (レス) @page39 id: e8a57b3ea6 (このIDを非表示/違反報告)
へべ(プロフ) - とても丁寧な文章で面白かったです、更新を楽しみにしています。 (2022年8月16日 23時) (レス) id: 1ff279b551 (このIDを非表示/違反報告)
八雲(プロフ) - 更新楽しみにしてます (2022年6月3日 23時) (レス) id: 3aff7205f2 (このIDを非表示/違反報告)
涙の道化師 - この作品はドスくん推しですか? (2022年4月25日 14時) (レス) id: 2537f89477 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:独裁道化師 x他1人 | 作成日時:2021年10月17日 23時