中学2年生 : 夏・刺激的 ページ9
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蝉の声が教室の中まで響くのを聞きながら、私は窓の外から帰宅する生徒を目で追った。
テスト期間ということもあり部活が休みで帰る人は多い。
私だって、影山がいなければ帰ってた。影山が、いなければ。
帰宅寸前になって担任に引き止められた理由は、「影山の勉強を見てやってほしい」という切に願った顔をされたからだった。
同じ部活のよしみだ、学年1位の美咲にしか頼めない。
当の本人はムッとしているんですがそれは。
いくら担任の頼みでも…となることはなく、私は笑顔で快く受け入れた。
別に影山の成績が上がろうが関係ない。勉強を見たことが担任に伝わればいいんだし。
「…影山、数学なんてやり方覚えればそこに数字入れるだけなんだからそんな顔して悩まないでよ」
「そのやり方が覚えられねぇんだよ」
「先生がここテストに出るぞって言った式を覚えればいいの」
「どれだ」
何でこいつバレーのサインは覚えられるのに式は覚えられないの…?
授業寝てるから? だとしてもさっき私が言った式だけ覚えてくれればいいんだよ。
「…頭脳を使うセッターがこんなんで悲しいよ、私は」
「数学は使わねえ！」
「理解の仕方は知ってるでしょうが！覚えればいいんだよ！」
私だって試験勉強の時間削ってんだから大人しく覚えて。
そう言うと影山は静かになった。
人に教えるとなると数学かなって思ったけど間違いだったみたい。
今からでも社会とかやらすかな。歴史の範囲まぁまぁあるし。
「…」
「…」
綺麗な顔。
1年生の時より体格良くなって顔の小ささがより目立ってきた。
丸いつり目が切れ目になりそうな今が、美少年って感じがする。
「…なんだよ。どっか間違えてっか」
「うん? 別に、見てないからわかんない」
「じゃあ何でそんなに…見てくんだ」
「…影山の顔が好きだから?」
「は…?」
ちょっと。そんな顔しなくてもいいじゃん。
「お前が好きなのは及川さんだろ」
「まぁ、そうだけど。影山の顔も好きだよ」
「……」
「はいはい。もう言いませんよ、そんな顔すんなら」
あからさまに引かれた顔されたのも初めてだよ。
私は自分の英語単語帳を開いた。
仲良くなったと思って言ったけど、影山からしたら気持ち悪いか。
「…二度と言うな」
「分ーかったって！言われなく、て、も…、え?」
「〜〜！見んな！」
なん、で、そんなに照れてる…??
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作者名：かげやま
| 作成日時：2024年3月14日 13時
