高校1年生 : 春・新たなる学校生活 ページ39
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春は苦手だ。
冬との変わり目でよく体調を崩すから。
だけど今年はちょっと好きかもしれない。
「── 新入生代表、1年5組 美咲A」
「はい」
スっと立ち上がり、パイプ椅子の間を通る。
ステージ上に上がる間、四方八方から浴びせられる視線に負けないように。
そして演台の前に立ち体育館を見渡した。
…ああ、結果に残せたんだ。
お母さんに言う通り。
「暖かい春の日差しが──」
達成感に満ち溢れて、緊張のきの字もしなかった。
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卒業式後の騒がしくすすり泣く声が聞こえてきたのとは逆に、入学式を終えた教室は静かでささやく声しか聞こえない。
私は窓際1番前という都合のいい席を当てたので、頬杖をついて窓の外をぼんやりと眺める。
…のどかだ。
「…Aちゃん?」
「！」
「だよ、ね? Aちゃん！お、覚えてないかなぁ…私、谷地仁花！」
「…仁花ちゃん?」
突然話しかけてきたその子の名前には聞き覚えがあった。
“谷地”
昔、小さい頃。お母さんの仕事について行き、そこで歳の近い女の子と会った。その子の名前が、“谷地仁花”だった。
「ひ、久しぶり…まさか、こんなとこで」
「うん！新入生代表挨拶で聞いたことある名前だなぁって思って顔見たら、Aちゃんだったからびっくりした！すごかったよ〜」
「ありがとう。私も知り合いがいて嬉しいよ」
「ね…私、緊張で胃の中の物が出そうだったよ…」
「そんなに?」
クスクスと笑うと、仁花ちゃんもえへへと笑った。
知り合いと言っても、1週間ちょっと遊んだ仲だけど。
中学でもあんまり友達できなかったから高校ではどうなるか不安だったし、仁花ちゃんなら安心だ。
この子は優しい子だったから、私に嫌がらせなんて幼稚なことはしないだろうし。
「仁花ちゃん席どこなの?」
「後ろから2番目みたい」
「じゃあ同じ列なんだ、よかった」
「…」
「…?」
「ちょっと、かわいすぎる」
眩しそうに目を閉じて、顔のパーツを真ん中に寄せる仁花ちゃん。
あ、はい…………。
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作者名：かげやま
| 作成日時：2024年3月14日 13時
