中学2年生 : 春・変わり目 ページ23
.
.
.
「あいつ、ピリピリしてるにも程があるぞ」
勇太郎が苦虫を噛み潰したような顔で私にそう言ってきた。
何の話だ、と顔を上げると確かに影山の顔が険しい。
…? 練習中にイライラすることはそんなにないのに。
この前の大会ではまぁまぁな結果を残し、そのまま年が明けた。
そろそろ4月になる今。練習試合では相変わらず命令口調でキレ散らかしているけど、どうしたんだろう。
( てかみんな私に言ってくるやめてよね )
勇太郎だけじゃない。国見や宮下はすぐ私に言って宥めるように頼んでくる。
「影山、どうかしたの?」
休憩中にタオルを渡しながら聞いてみると、少し間が空いてから「何もねぇよ」と顔を逸らされた。
……なんもない顔じゃない。
「…話したくないならいいけど、だったらイライラも隠しなよ。部活の人に当たらないで」
「分かってる」
「……いつでも話聞くから」
「…。帰りに、話す」
「うん。今は我慢してね」
最近はもう勇太郎たちと影山の壁が大きくなってきている。
元々仲良いわけでもないんだけどさ…。
先輩たちは言い合いすらそんなにしなかったからどうしたらいいか分からない。
及川先輩、侑、そして影山。
セッターは真ん中を繋ぎ攻撃の指示も出す。
チームプレーであるバレーにおいてセッターが他の選手との仲を乱すのは、あんまりよろしくないんだけども。
先輩と侑には怒ってくれる人がいた…けど、影山には誰も……。
「……」
どうしたもんかなぁ。
帰り道。
いつものようにマネージャー業務を終えて影山と一緒に帰る。
「…この前、一与さんが、死んで」
「…かずよさん?」
「じいちゃん」
「…そう、だったんだ」
そこからゆっくり、影山は話し始めた。
“強くなればもっと強い誰かが現れる”
話を聞いて思った。
どれだけ大切な人で、信頼しているのか。
「ずっと、バレーをしてたい」
きっと
これから先できるのかも、分からないけど。
チームを第三者目線から見ている私に何ができるかは想像もつかない。
けれど、影山の味方でいよう。影山がひとりにならないように。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 82人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かげやま
| 作成日時：2024年3月14日 13時
