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ピーッ
聞き馴染みがある笛の音に、顔を上げる。
お願いします、と握手をすれば試合の始まり。
私は目の前に来たポニーテールの先輩の手を見つめた。
「…お願いします」
「…」
「本気で、打ってくださいね。スパイク」
「は?」
無視ならどうぞしてください。
あんたが誰のことが好きで私に嫉妬してるのか知らないけど、どうせかわいさで私に勝てないからしょうもない嫌がらせするんでしょ?
「先輩のクラスに勝ったら、今までのこと言いますから」
チラ、と及川先輩を見ると、先輩は顔を歪めて「調子乗らないで」とコート内に戻って行った。
( よし、これで本気で打ってくる )
誰に何を言うとかそんな予定はない。言った方がめんどくさいことを私は知ってる。
だけど今までされたことを無かったことになんかできるわけないよね?
「佐々木さん、ごめんけどブロックは飛ばないでもらっていい?」
「あ、うん…」
「その代わり全部佐々木さんの所にあげるから」
「！」
セッターとアタッカーがいるなんて本当に有利で助かった。
…あっちも、エースがいるからそう思ってるんだろうけど。
審判が笛を鳴らして、ウチの子がサーブを打った。
レシーブ、ちょっと曲がった。トス、高め。
( 高めに上げてって言ってあるんだ )
ジャンプして、打つ。
__ ドッ トン
「!?」
「な、ナイスレシーブ！」
水戸さんがスパイクを打って、ピッという笛が鳴る。
おおお！という声が体育館に響いた。
「ナイスキー」
「美咲さんのレシーブにびっくりして、ちょっと助走遅れた…」
「うん、ネット引っかかるかと思ったけどよかった」
「よく上げられるね…」
「まぁ、」
スタメン影山のサーブと、一個上の双子のスパイク拾ってきたからね。
女子のスパイクなんてゆっくりに見えるよ。
ポニーテールが大きく揺れて、私を睨む目と合う。
女子バレー部のエースが男子バレー部のマネージャーに拾われまくるの、苦痛だよね? そうだよね? イライラすればいい。その醜い顔を及川先輩に見られればいい。
今まで散々なことしたんだから、当然。
それから、あの先輩が1点も決めることなく試合は進行して行き、私はセッターである佐々木さんを一歩も動かさずボールを上げ続けた。
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作者名：かげやま
| 作成日時：2024年3月14日 13時
