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「先輩、お疲れ様です」
「白石くん」
出た、デカ犬…。
「影山が残らないから一緒に帰れそう」と言われた時の金田一が不憫だ、本当に。いつからかマネージャーの業務があるから、じゃなくて影山が残るから、になっていた美咲。
だけどそれには理由があって、不審者に遭った美咲を影山が送っているからだ。最初は俺らが残ればいいって話だったけど、私を理由にして残らないでという意味のわからない理由で断られた。
今日は一緒に帰れるって言ったよな?
と、美咲の顔を見ると、こいつもデカ犬が来るとは思ってなかったらしい。
「今日祭り一緒に行くから待ってました」
「あ、うん」
「…迷惑でした? なんか、いつもより人多いし」
デカ犬が俺らの後ろを見た。
そう、今日は影山と宮下も一緒だったのだ。
迷惑って言えよ美咲。お前が約束したのは夏祭りだけだって。
「迷惑じゃないよ」
アーーーーハイ、だろうな。
俺らと違う愛想のいい話し方。
どうせ素なんか見せてらんねーんだろ。
_「私、バレー部とは付き合わないって決めてるから」
…ほんと、むかつく。
「いやぁ、白石くんを見る度さ、俺思い出しちゃうよ」
「? 何をですか」
「去年の美咲」
「ちょ、宮下…」
突然話し始めた宮下は、ニヤニヤと悪巧みをした表情。
「白石くんは知らないと思うけど、美咲も先輩に好かれようと必死でさ」
「宮下！やめてってば！ほ、ほら、行こう白石くん…！」
「あ、はい」
俺らから距離をとろうとデカ犬の腕を引っ張って走って行った。
おい、腕掴むな。金田一が見てるところで。
「何であんなこと言ったの宮下…」
「…美咲があんなに慌てた理由分かる?」
「…?」
たしかに、何であんな慌てたんだ?
美咲が及川さんのことを追っかけてた、なんて知られて困ることか?
「見るからに白石くんのこと好きじゃなさそうなのに、彼のことあんなに構ってる。白石くんも何でだろうって思ってるでしょ」
「まぁ、そうだな」
「でも及川さんの話聞いたら、同情なんじゃないかって察しちゃう。美咲は気づかれたくないんだよ」
「……」
つまり、宮下は嫌がらせで…。
「可哀想だね、白石くん」
_「上手い具合に男避けになってたの」
あいつは、人の好意ですら素直に受け入れられない。
いちばん近い人の好意だって…。
あんなやつ、好きになるのやめちゃえよ。
だけどそう思ってても、美咲の魅力は、俺も分かっていた。
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作者名：かげやま
| 作成日時：2024年3月14日 13時
