2 ページ2
.
…で、どうしてこうなったんだか。
体育館ステージ前、ひとつだけ大きく張られたコートを見て乾いた笑い声が出た。
そのコートを囲うように人が集まっている。
「えー次決勝なのやばい！頑張れ！」
「行けるぞ女子ィ！頑張れェ！」
あーー帰りたいかも！すっごく帰りたいかも！
_ どうやらウチのクラスに女バレの子2人がいたらしく、練習なしの球技大会では中々の有利だった。
加えて未経験だと思われていた私がボールを拾いまくるから順調にトーナメントを進んでいき、ついに決勝戦まで来てしまった。
下手とか、そんなレベルじゃなかった。みんなボールを避けまくり。
クラス賞のくの字もない。優勝目指してるのうちのクラスだけ?
するとバレー部の子が顔を合わせてコソコソ話している。
私を毛嫌いしてる子と同じグループではあるけど、意外と話しやすくて。
「…どうしたの?」
「！……実は、相手の2年生のチームに、先輩がいて…」
「へぇ…」
「その先輩、中でも怖い先輩だからどうしようって」
どれ? と奥にいる集団を見る。小さく指を指した「ポニーテールの背高い人…」で、目を丸くした。
( あの人、タオルを落とした… )
頭ひとつ抜いていたから覚えている。
そこそこ整った顔、スラッとしていて如何にも怖そうなオーラを放っている。
「…」
「これで変なこと言われたら」
「ね…美咲さんのことも、あ…ちがくて」
「…いいよ、知ってるから」
「ご、ごめん」
謝られる筋合いないよ。…私、あの人に謝ってもらいたいし。
( なるほどね… )
「！」
「あ、気づいた」
大好きな人の声。首を横にぶん回すと、体育館を区切っている緑色のネットの向こうに及川先輩が立っていた。
制服で手を振っている。
「及川先輩！」
「久しぶり、元気…だと思ったけど、俺の前だからか」
「元気です…！」
「お前、なんで決勝に残ってんのさ」
「…な、なりゆきで」
視線をビシバシ感じるけど知ったこっちゃない。こんな機会ないんだから…！
少し身長伸びてる気がする。見ない間に大人の人になっちゃった…?
「1人ですか?」
「ううん、岩ちゃん男子の方見てる。もうすぐ終わると思うよ」
「そうですか…。及川先輩、会えて嬉しいです寂しかったので」
「…はあ」
「なんですか」
「…不覚にもかわいいと思ってしまった」
「変な話し方」
誰のせい!? って怒る及川先輩かわいい。
「俺ここで見てるから頑張って」
…ああ、今ならどんなボールでも取れるかも。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 82人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かげやま
| 作成日時：2024年3月14日 13時
